短兵急に2006/11/12 00:48

 今日は一日雨。昨日ベランダを塗っておいてよかった。午前はチビと長い散歩をし、午後は、授業の準備、読書の予定だったがも客人が来て、温泉へ行き、夕飯をわが家で食べる。ビールを飲んだらまたふらふらとなる。客のいる前で眠り込む。これはだめだ。客が帰り、回復してから、授業の準備と読書。明日は6時起きだ。

 坂野信彦『七五調の謎をとく』(大修館書店)をようやく読了。とりあえず、和歌は何故五七五七七なのかという一つの理屈は理解できた。この本では、日本語の一句の基本音数を八音としている。七音や五音は、途中もしくは最後の音をのばすことで八音になる。何故奇数音なのかというと、句を文として続ける場合に二音二音では文が構成できなくなるからだという。たとえば二音の言葉に助詞がはいると三音になる。ところが二音で切って発音すると、意味を構成できない。破綻が生じる。そこで、奇数音で一句を構成し、余った音をいわば引き延ばし音として内在させることでまとまりのある句とする。そして、その余った音が句としのて力(勢いや余韻)をつける、というのである。
 これが基本的な考えである。五七五七七は、だから八八八八八が基本音数。とすると、足りない音数は、この歌自体を、一つの文として構成しさらに勢いや余韻を与える役割を果たしているということになる。
 言い換えれば、本来の理想的な音の自然性である八音に齟齬をきたす音数を構成することで、歌の言葉は成立しているということになる(ある意味ではわれわれのふだん話す言葉そのものもそうだということになる)。この八音の音数と奇数の音数とのずれは、まさに、われわれの身体レベル(自然性)でのずれでもある。そのずれもしくは違和を抱え込んでいるからこそ、言葉の音が逆に意識され、その強弱や、高低や、長さや、リズムが、意味を持ち始めるということではないか。
 そのように考えると、短歌の五七五七七はわれわれの身体レベルでのズレを生じさせる音数ということになる。
 そういう意味では確かに面白い。
 だが、問題はこれは別の言語にあてはまるかどうかということである。アジアの歌の音数律は、圧倒的に五音、七音である。もし、この音数律が、他のアジアの言語においてもやはりズレを引き起こすものなのだしたら、そこには、歌の音数律というものの普遍性が見えてくる。もしそうだとしたらだが。

    時雨る日短兵急に思考せり

    客人ら鍋喰ふて帰る初時雨

うっすらと雪2006/11/12 23:51

 朝6時に起きて7時19分の梓に乗る。新宿着9時24分。これだと学校へ10時には間に合う。きついようだが、駅までは奥さんに車で送ってもらうし、梓では2時間よく眠れるし、川越から通うよりは楽である。実際川越と一時間程度の違いしかない。問題は交通費と、朝9時までに着く梓がないことだ。軽井沢だと新幹線があるので軽井沢から一時間で東京。本数も多いので9時までに東京に着くことができる。だから、軽井沢から通勤している人が多い。ところが、中央線は時間がかかるし本数も少ないので通勤は難しい。だから、定住していても別荘には週末のみ帰る人が多い。私は定住ではないが、年の三分の一は山小屋暮らしなのでそれに近い。金曜の新宿発最終の梓は、けっこうそういう人で混雑する。

 朝うっすらと雪が積もっていた。さすがに冬になってきた。今頃は唐松の黄色くなった紅葉がきれいだ。紅葉や満点星もまだ紅く残っているのもある。

 今日は一日推薦入試である。来週の日曜もそうだ。どの大学・短大でもそうだが、生き残りをかけて優秀な学生を入れようと必死だ。そのためにはハードルを高くしたい。だが、高くすると受験生が減り定員割れを起こしかねない。一流校ではない大学・短大の抱えているジレンマである。われわれも例外ではないが、今のところ、ハードルを低くしないで何とか定員を保っている。この調子でいきたい、これは最近責任ある立場になった私の職業上の願望である。

 家に帰り(奥さんは明日帰ってくるので一人)、映画を観て、短歌時評のための歌集を再読。DVDはリュックベッソンの「アンジェラ」。まあまあ面白かった。現代の街に天使が降りてくるというパターンのものだが、天使に救われるアルジェリア系の冴えない男の描き方とエスプリの効いたセリフはさすがにフランス映画だ。
 最近いい映画の新作がなかなかない。最近観た中で面白かったDVDは「ウォークザライン」。アメリカのロック歌手ジョニーキャッシュの伝記映画だが、これはけっこうよかった。暇をみてはなるべくたくさん観たいのだが、なかなか時間がないのと、疲れているので、どうしても疲れない考えない映画を借りてきてしまう。だからいい映画をたくさん見逃している。いい本もまた読まないでいる。

   冬に入り昨日の我を仕舞いけり

   冬めきて手つかずの刻重くなる