一葉忌2010/11/23 23:38


 今日は一葉忌である。学生を連れて一葉ゆかりの地を回った。一応授業の一環なのだが、祝日なのでみんなバイトで忙しいらしく4名の参加者である。寂しい数だが、逆に、少ない分だけてきぱきと動ける。

 まず、春日の菊坂にある伊勢屋質店に行く。一年で今日だけ中を公開している。けっこう人が並んでいた。なかに入ると、明治の質屋の雰囲気を感じることが出来る。質屋そのものは建て替えられているが、蔵は一葉が通った当時のままだそうてある。

 そこから歩いて10分ほどで当代の赤門前に出る。法真寺では一葉忌の法事が行われていて、ここもけっこうな賑わいである。まさに縁日である。朗読家の幸田弘子さんのサイン会が開かれていて、お顔を拝見することが出来た。学生には、あの人が「たけくらべ」を朗読しているご本人だと説明。授業で幸田さんのCDを聞かせているのである。

 本郷三丁目の大江戸線から上野御徒町駅へ、そこで日比谷線に乗り換えへ三ノ輪に出る。そこから10分ほどで一葉記念館。今日は入場無料である。午後1時から田中優子による講演会があったが、時間が合わず聞くことが出来なかった。残念がっていた学生もいた。

 そこから浅草に出て、お昼を食べようということになり、お好み焼きの店に入った。人数が少ないので、こういう時にすぐに食べ物屋に入れるのがいい。人の良さそうな下町の老夫婦がやっている古い小さな店で、もう歳で、腰を悪くしてしまって土日と祝日しかあけてないんだよ、と話しかける。これからどこへ行くんだい、というので、スカイツリーでも見て帰ろうと思っているというと、スカイツリーについていろいろと話をしてくれる。スカイツリーの記事が載っているタウン誌をくれた。これで浅草も元気になるねと語っていた。

 食べている最中に戸を開けて客が来たが、子どもがいたので、おばさんが子どもはだめだよ、と客を追い返した。この間子どもがやけどをしてね、それで子どもは入れないことにしたという。お好み焼きをこういう店で食べるのは実に久しぶりである。なかなかおいしかった。

 東武線で一つ目の業平橋で降りる。まさにそこはスカイツリーの真下である。何処でスカイツリーを見ても真上を見る感じなので首が痛くなる。私は二度目だが、学生達はけっこう感動していた。

 歩いて押上駅に出て半蔵門線で帰宅。朝10時半から3時までだったが、一日なかなか充実していた。学生がもっと参加していたらよかったのだが。これは反省点である。

 帰ってチビの散歩をして、夕方テレビを見たら、北朝鮮の砲撃のニュース。戦争でも起こったかのようにこのニュースばかりである。驚いたが、いつもの北朝鮮の挑発のようだ。北朝鮮もかなり追い詰められているようである。追い詰められていると言えば、菅政権も追い詰められている。自民党のいつもの挑発にあわてふためいている。

 思うのだが、今、日本は、頭と身体とがばらばらに思考している。国民もそうだし政治も経済もそうだ。頭ではこうしたいと思っているのに、身体は言うことを聞かない。勝手に動いてしまう。かつての自民党は頭(理想や理念のようなものと考えればよい)をつかわずに身体に身を任せるところがあった。頭では時々かなり保守的なことを言うが、結局、身体が欲する平和主義に身を任せてきた。これはこれでなかなかうまいやり方だったのだと思う。

 が、バブル崩壊以降、身体が弱ってしまって、身を任せられなくなってしまった。小泉首相は身体を強くしようと、かなり強引に鍛えようとしたが、リーマンショックで身体は悲鳴をあげて、倒れる寸前になり、身体にはやさしい民主党が頭を使う政治を掲げて、政権交代をした。が、身体は回復しないし、頭で考えるとおりに動いてくれない。

 ここで言う身体とは、経済のことではない。人びとの生活意識そのもののことである。そこには利害で動く欲望があり、生への本能があり、互助的な知恵もある。思うに、民主党はこの身体を低く見ているところがある。つまりコントロール出来ると思い込んでいる。だが、そうはいかない。官僚組織だって身体である。簡単にはコントロールできないのである。

 今日本の身体はとても不安定な状態だが、北朝鮮ほど追い詰められているわけではない。これからも短期間で首相を替えたり政権交代になるかもしれないが、それはそんなに追い詰められていないことの現れだろう。頭と身体がばらばらでもなんとかやっていけるのは悪いことではないのだ。むしろ、北朝鮮のように、死に体の身体と空威張りの頭がまったく一体化している方が最悪なのだ。

 今の日本は、政治も経済も外交も、あっちを立てればこっちが立たずの状態で、誰がやってもうまくいかないだろう。こういう時に国民がいらいらして、カリスマ的な政治家を望んで独裁でも何でもいいからすっきりさせてくれ、と願望する時が一番怖い。そう考えれば、今のばらばらでいらいらする政治や経済に辛抱強くつきあっていくことも大切なのだと思うのである。

                         時雨止み菊坂界隈一葉忌

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