寛容であって欲しいが…2009/07/03 00:57


 相変わらずチビと遊んでいる。ここのところ毎日のように出校。今週も、金曜は後援会会の懇親会があり、土曜は学会のシンポジウム。結局週6日出校である。家に帰るとさすがに何もする気がなくなり、チビと遊ぶ。ただチビの方は遊んでくれない。無理矢理遊ぶのである。迷惑だろうが、それがチビの仕事なのだ、チビよ。写真は首輪を頭に載せて遊んでいるところ。

 今日は課外講習で万葉集の講義。受講者は年輩の人がほとんどである。巻2の挽歌を読み始める。有間皇子の自傷歌から天智挽歌群に入ったのだが、なかなか進まない。この講義けっこう準備をしている。そのせいか話すことが多くなり、前へ進まないのである。要領よくやる手もあるが、要領を期待されているわけではないので、これでいいのかなと思っている。

 ところが、学生への授業となると、あまり進まないと要領が悪いとクレームがつく。最近の学生は、授業を聞いてポイントが掴めないと、試験の時に困ると不安になるらしく、要領が悪い、とかポイントが掴めないとすぐに不満を言う。むろん、言われる方に問題はあるのだが、そこは学生もシビアになってきている。悪いことではないが、脱線したり、まわり路の授業をしずらい雰囲気になってきているのは確かだ。

 最近では、アンケートではなく、個々の学生の声を直接聞く機会を設けていて、学生も授業に不満があれば声をあげることに躊躇しない。中には、授業料を払ってまで何故こんな授業を受けなきゃいけないのか、という意見を言う学生もいる。学生の不満は、大事にしなきゃ行けないので、立場上、私は不満の声があると教員に文書で届けるのである。届けられた教員は、心穏やかではないだろう。学科長があなたの授業に文句を言っている学生がいますよ、と知らせるのだから。が、時々、学生の声も少し行き過ぎではないかと思うこともある。

 教育を受ける事は、自分にとって未知のことを知ることである。本来未知の事はそれが未知であるということ自体面白いもののはずである。ところが、教育を受ける側が、教育する方法や、教師に対して、面白い、面白く無いという判断基準を最初から用意して、その基準に合わないものは面白く無いといって未知のことを知る機会を閉ざしてしまう。そういう態度で知識を享受しようとすれば、当然得られる知識は、限られてくるし、狭隘なものになるはずである。

 教える側は完璧ではない。みんな努力はしているが、いつも上手く教えられるとは限らない。授業料を支払って上手く教えてくれないことに文句を言うことは当然である。が、その文句がある限度を超えたとき、その結果文句を言う自分を不幸にすることもある。というのも、限度を超えた要求は、何かを破壊しなければ収まりがつかなくなるからだ。

 教師が破壊されることもある。文句を言う自分が損なわれることもある。教師が損なわれることは、社会で仕事をすることの厳しさだから仕方がないとしても、自分を損なうということはどういうことか。それは、文句を言うことで自分を毀損しない快感を身につけてしまうということである。つまり、その快感を身につけることで、自分を大きく損なうのである。

 自分が上手くいかないのは、教え方が悪いのだという論理を絶対的なものとして身につけてしまうと、とても楽である。社会に出ても、この論理で自分を守ろうとする。結果として、実力を身につける機会を失い、人から距離を置かれる。

 さて、私たちの社会では、こうなるリスクを抱えながら、他人に文句を言うことが奨励されている。わたしも立場上学生に奨励している。私は若いとき、自分が勉強していた大学に文句を言った。破壊しなければ収まりがつかないくらいに文句を言った。でも、大学で教え方の下手な教師に文句を言ったことは一度もない。むしろ、とても流ちょうに予備校の講師のように無駄なく教える教員は苦手だった。だから、私としては、本当は、多少教えた方が下手でも寛容に受け止めなさい、そういう教師からでも学ぼうとすればいろいろ学べるものだから、むしろ、そういう寛容さで勉強したほうが豊かな教養が身につくよ、と言いたいところなのである。

 もし、私の授業に対して文句が出たら、立場上、私は自分にその声を届けなければならない。その時は、その声の主にもう少し寛容であるべきではないかと、文句を(むろん、独り言で)言うつもりである。     

不寛容なものたちと生きる七月

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