久しぶりに八王子2007/06/14 00:37

 八王子の付属高校で学生向けの進学相談会があり、八王子の校舎へと出かけた。家からは車で、川越インターから入り、圏央道の終点、あきる野で降りるとすぐである。ただ料金が片道1600円かかる。高い。実は来週、圏央道が中央高速とつながる。茅野の山小屋にしょっちゅう通っている私としては歓迎なのだが相当料金が高くなりそうだ。

 私の所属する大学はこの八王子校舎から今年撤退した。ただ、中学高校はそのまま残っている。短大にも志願者がいるというので、私が出かけることになったのだが、ほとんどが心理学コースの志願者である。

 先日のオーブンキャンパスでも心理学コースの相談が多かった。志願者がいるということはうれしい限りなのだが、ただ、短大であるが故に複雑な心境でもある。心理学を本格的に勉強したいのなら四大を目指すべきだろうし、就職にしても、特に心理学コースだからこういう職業に向いています、とはなかなか言えない。

 一時期全国の大学に心理学部がたくさん作られたが、今どこでも学生集めに苦労していると聞く。その大きな理由は資格を取ることの難しさと、資格をとったからといって、それが安定した職業に結びつかないことにあるようだ。例えば臨床心理士はカウンセラーとしてひっぱりだこだが、ほとんどが派遣である。医者や看護師のように専門の施設があってそこで働くというわけではない。資格を取ったから生活が保障されるというわけではない。

 短大では、資格は最初から無理だし、専門を目指すなら他大学の心理学部の編入を目指し、ここでは教養として心理学の知識を身につけてもらえばいいと思っている。どんな職業に就けばいいですか、とよく質問されるが、一応、人間の心を勉強するのだから、人と接する機会の多い職業などがいいのでは、と答える。が、本当は、心理学を勉強したから人と接する事が上手くなるなんてことはない。

 人と接する技術というのは、友達や親との関係の中で、自然に身についていくものである。むしろ、それがなかなかうまくいかないときに、その理由を考える学問として心理学が成立するということだ。ということは、心理学を勉強したい学生は、どこか人と接することが上手くいかないという問題を抱えている場合が多い。心理学の知識は、学生に何故そうなったのか、どうすればいいのかを教えるが、人と明るく接するようにと背中を押してくれるわけではない。むしろ、考えさせてしまうのだから、その意味では、人と接する職業についたら、とはなかなか言えない。

 ただ、人との関係に悩んだとき、その悩みを整理して客観視する力を与えてくれる。これは大きいと思う。それは他者との関係を改善はしないだろうが自分との関係は改善してくれる。それだけでもいい。その意味で、心理学を勉強したからこういう職業に向いています、とは言えないが、どんな職業についても役には立ちますよ、とは言えるだろう。その意味で、文学を学ぶこととそんなに違いはないのだと私などは思っている。

       他人との距離をはかりつつ六月