自由恋愛2009/04/02 00:10

 今回の中国の調査は、去年と、日程も取材場所もほとんど同じである。前回、現地の人に頼んでおいた儀礼を取材するのが今回の調査の主なる目的である。24日に貴州省の貴陽に泊まり、次の25日に湖南省の鳳凰県に入る。午後さっそく、個人でやっている苗族の博物館を訪れ、儀礼の取材を開始。その博物館の館長さんが、儀礼の出来る宗教者を呼んで来てくれて、われわれが到着するのを待っていたのだ。

 その儀礼は天の神を呼び、家族の禍を払うというものだが、その中で、様々な呪文を唱え、豚を供物として供え、そして、創世神話を唱える。儀礼の中で唱えられる創世神話の調査は初めてである。というより、今まで、創世神話がきちんと儀礼の中で唱えられていることを取材し記録した調査はほとんどなかったのではないか。その意味ではわれわれの調査が初めてであり、それなりに期待を抱いた調査だった。

 この儀礼は本格的にやると5日はかかると言われた。われわれには2日間で行うという。1日目は、夕方5時から夜の11時まで。次の日は、朝6時から昼の11時までという。25日の夕方から儀礼が始まり、夜中にホテルに戻る。そして少しばかり寝ただけでまた儀礼の調査に向かう。いきなりハードな調査でさすがに疲れた。でも、この調査は疲れを補うに余りある成果があった。

 27日の午前・午後とも、苗族の村に入り、歌垣の調査。午前中に行った村では、女性達と歌の指導をする歌師が、菜の花畑を背にして掛け合い歌を歌ってくれた。とても気分のいいものであった。この地の苗族の人たちは、歌詞を歌師に教えてもらいながら歌う。男女が出会って歌うときは、前もってどういう内容の歌を歌うか歌師に聞いていて、それを歌うのである。

 その意味では、歌い手が創作しながら歌うというものではない。実は、歌というのは難しいテクニックが必要なので、こういうやり方は多くの人が歌うにはかなり合理的なやり方である。というのも、自分で歌詞を作らなくても異性と歌の掛け合いが出来、それで結婚に到るということである。つまり、歌手のような限られた人でなくても、音痴で無ければとりあえず誰でも歌えるからである。そのことで結婚も出来るということである。

 歌が歌えない者は、仲人を通して誰かを世話してもらうのだそうだ。日本で言うお見合いになる。自由恋愛は歌が歌えるものの特権である。

 むろん、仕入れておいた歌詞を歌うのだから、あまり長くは続けられない。でも、また会えばいいのであるから、何回かデートをして歌の掛け合いをして、結婚に至る。現代の25歳の若い娘さんも市で男と知りあい歌を掛けあって結婚したと聞いた。まだ歌垣は生きているのである。

                        菜の花や歌う女に心地よく

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