『よせやい』を読む2007/11/23 00:26

今日は朝から授業と会議で忙しい日だが、3時に卒業生が二人私の部屋に訪れた。ケーキを出して、一時間ほどいろいろ雑談。楽しい時間をすごした。その後は、入学前教育の打ち合わせである。入学前の高校生の学力を把握し、遅れているものについては課題を与えて基礎的な勉強をさせる。というプログラムをどう作るかという会議である。費用と手間暇かければ出来ないことはないが、なかなかハードルが高そう、というのが私の感想である。

 口承文藝学会編の『シリーズことばの世界 うたう』(三弥生書店)が送られてきた。私は「ぺー族の掛け合い歌」について書いている。この本、「ことば」という切り口でいろんな歌を扱っていて、なかなか面白い。

 吉本隆明の『よせやい』と、田村裕『ホームレス中学生』を読了。吉本さんの本は思想の雑談といったインタビュー形式だが、ところどころやはり面白いなあと思うところはある。その中で、学校の先生は教え方などうまくなくてもいいんだと言っているところが、教え方に悩んでいる私としては救いであった。

 どうせ学校で勉強したってそんなものは残らないんだから、というのが理屈だ。生徒に残るのは、その先生の人柄や生き方から滲み出るちょっとしたことであって、そういうことの方がずっと記憶に残って影響を与えるものなのだ、と言う。確かに、そういわれりゃそうだが、だから教え方などいいかげんでいいんだという訳にはいかないだろう。たとえ残らないにしても、それはそれで完璧を目指すのがプロというものだろう。

 この本のキーワードは、「構想力」「自意識」「人間力」である。今それらが問われているという。分かりづらいのが「自意識」だろうか。自我ということではなく、公共的なものに対して、自分はこれはおかしいといった違和をきちんと持てるかどうかだと言うことに近いようだ。それは「構想力」にもつながる。自分の生きている世界に対して、ささやかであっても自分なりの見通しを持つことが大事なのだと言うことだ。

 私はとても「構想力」も「自意識」も自信がないからあとすがるのは「人間力」だけだ。が、これも理想を描き得る能力ということのようだから、つまり、これらのキーワードは同じなのだということになろう。右顧左眄せずに自信を持って生きろと言われているようなものである。

 『ホームレス中学生』はすでに100万部売れているという。確かに、面白いと言えば言えるが、100万人が買わなくてもいいだろうに、と思ったのは確かだ。突然父親に「解散」と言われて、ホームレス生活をする三人兄弟の話は、なかなか読ませるが、面白いのはそこだけで、後は、普通の話になってしまった。同じお笑い芸人がだした『一人二役』もそうだが、キーワードは親子愛であり、素直さである。ジェットコースターのような人生と、純情さ、そして社会的な成功、というとりあえずのベストセラー要素は揃っているということだろう。

 帰り花つぼみの裂けてひらきたる

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