恋愛小説を読む ― 2007/05/31 01:04
今日は雑務と授業の準備で一日を費やす。夕方に会議が一つはいる。朝の通勤時間に、江國香織『きらきらひかる』を読了。これも学生の推薦した本である。名前は知っていたがこの人の本は読むのは初めてだ。けっこう若い女性に人気があるらしいが、読んでみて納得。こういうのを生活感の無い文体というのだろうが、都会的で軽やかで、微妙な感情の動きを的確に短いフレーズで表す。
ホモの夫とアル中で情緒不安定な女性との結婚生活を描いた作品だが、恋愛小説というよりは、恋愛でもなく、友情でもなく、人間愛というものでもなく、ただ、お互いを気遣うだけの、愛によく似た関係は可能か、といったテーマの小説といったらいいか。
現代の恋愛関係は、わかりやすい男女の異性愛では説明できない微妙な揺れ動きを伴っている。その微妙さをうまくとらえた小説だと思う。誰にもよくわからない心の動きに戸惑う恋愛を、愛の成立しない関係を無理矢理設定しながら、そこにどうやって愛に似た関係を作り上げるのか、と展開させることで、この現代の微妙で予測のつかない恋愛を上手く描いたと言えるのだろうか。
こういう小説の主人公は、みんな傷つきやすい。繊細である。それが当然だとでもいうようにふるまう。傷つく理由は、選択する生活や関係が、感情的である自己の身体を出来るだけ抑え、どんな感情も透明で淡い気分に変換しながら、快適な消費生活を堪能しようとするからである。つまり、そうして抑圧した感情に復讐されるので、傷つくというわけだ。
この主人公の女性もそうである。ホモの夫との生活に合意して、それでも快適な関係は作れると結婚はするが、身体はそれに耐えられない。時々暴発する。その意味ではとてもわかりやすい感情の動きである。
とても現代的で微妙な恋愛を描いたこの小説を支えているのは、とてもわかりやすい感情の動きだと言うことだ。だから、若い女性に受けるのだ。そのわかりやすさが共感を形作る。もう少し意地悪く、暗さを抱えた作家なら、この恋愛を徹底して不条理に描くだろう。そうしたら、たぶん若い女性は誰も読まない。私みたいな評論家には受けるだろう。
学生への推薦図書だが、まあ、こういうのがあってもいいのかなとは思う。わかりやすい恋愛小説ではないが、それなりに共感する要素があり、それを説明させるには良い教材になると思う。
この歳で五月の風に苛立ちぬ
ホモの夫とアル中で情緒不安定な女性との結婚生活を描いた作品だが、恋愛小説というよりは、恋愛でもなく、友情でもなく、人間愛というものでもなく、ただ、お互いを気遣うだけの、愛によく似た関係は可能か、といったテーマの小説といったらいいか。
現代の恋愛関係は、わかりやすい男女の異性愛では説明できない微妙な揺れ動きを伴っている。その微妙さをうまくとらえた小説だと思う。誰にもよくわからない心の動きに戸惑う恋愛を、愛の成立しない関係を無理矢理設定しながら、そこにどうやって愛に似た関係を作り上げるのか、と展開させることで、この現代の微妙で予測のつかない恋愛を上手く描いたと言えるのだろうか。
こういう小説の主人公は、みんな傷つきやすい。繊細である。それが当然だとでもいうようにふるまう。傷つく理由は、選択する生活や関係が、感情的である自己の身体を出来るだけ抑え、どんな感情も透明で淡い気分に変換しながら、快適な消費生活を堪能しようとするからである。つまり、そうして抑圧した感情に復讐されるので、傷つくというわけだ。
この主人公の女性もそうである。ホモの夫との生活に合意して、それでも快適な関係は作れると結婚はするが、身体はそれに耐えられない。時々暴発する。その意味ではとてもわかりやすい感情の動きである。
とても現代的で微妙な恋愛を描いたこの小説を支えているのは、とてもわかりやすい感情の動きだと言うことだ。だから、若い女性に受けるのだ。そのわかりやすさが共感を形作る。もう少し意地悪く、暗さを抱えた作家なら、この恋愛を徹底して不条理に描くだろう。そうしたら、たぶん若い女性は誰も読まない。私みたいな評論家には受けるだろう。
学生への推薦図書だが、まあ、こういうのがあってもいいのかなとは思う。わかりやすい恋愛小説ではないが、それなりに共感する要素があり、それを説明させるには良い教材になると思う。
この歳で五月の風に苛立ちぬ
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