雲南で神懸かりを調査 ― 2014/09/07 01:04
二日に中国から帰国。さすがに疲れた。まず風邪を引いた。それから腰痛になった。その二つともまだ完治していない。調査としては、収穫はいろいろとあった。特に、小石宝山の観音会の調査は、私は三回目だが、神懸かりの実際を記録出来た。12年前に見た弥勒面の舞は今回なかったが、その由来を聞くことが出来た。
橋后というかなり山奥の、それこそ地元の人しかしらない場所である。観音会の祭りは25日だが、その前夜祭に歌の掛け合いがある。掛け合いはすでに調査してあるのだが、25日の本番の祭りをまだ見ていないので、それを観る野が今回の目的であった。いずれにしろ、24日の夕方に山に登り徹夜をした。歌の掛け合いはあったが、ほとんど年配者の楽しみ程度で、以前にみたような若者の掛け合いはなかった。この山奥でもついに自然な若者の掛け合いは消えたということである。
だが、25日の午前、神懸かりを見ることができた。村人は、観音廟にお参りに来る。観音廟にはいくつかの建物があり、観音や道教の神、仙人などが祀られている。村人は、同じ村の女性である宗教者の女性にお経をあげてもらう。お参りに来るのもほとんど女性である。この観音会は女性の祭りである。さういつた礼拝があちこちで行われるだけで、われわれはだいたいの様子は分かったので、退散しようかという話になったが、私はもう少し粘ろうと言った。
そこでいろいろと聞いて見ると、仙人堂という建物では神懸かりがあるという情報を得た。そこで行ってみると、宗教者にお経をあげてもらっていた一人の中年の女性が突然神懸かりだしたのである。しばらくすると、それを見ていた中年の女性が一人神懸かった。最初に神懸かった女性は、宗教者に神懸かるような依頼をどうやらしていたらしい。それは、体調が悪く、宗教者になることでその苦痛から解放されたいということである。沖縄のユタと同じで、巫病を一つのきっかけにして憑依したということであるようだ。
白族の宗教文化はほんとうに奥が深い。この地域は仏教信仰が浸透しているのだが、実際はかなり自然宗教の要素が強い。若者の歌の掛け合いが消えたのは残念だが、憑依が当たり前のように行われる、女性達の宗教儀礼はまだ続いていくだろう。できればまた取材に行きたい。
だが、さすがに徹夜はこたえた。寒くて、そして眠場所もない。前回は一晩歌の掛け合いがあったから時間を気にすることなくすごせたが、今回は何もないので、一晩寝るしかなかったが、寝ることが出来ずそれが辛かった。それで体力を消耗したが、大理のホテルで一晩ボイラーの音が天上の真上からすごいうなり声できこえてきて、一晩眠れなかった。それがきっかけで風邪を引いた。体力の限界を超えたというわけである。熱が出たが、中国の薬局で買った薬で熱はスグにさがった。咳がでたが、これも市販の薬でだいぶよくなった。聞けば、抗生物質ということだ。中国では市販の薬で抗生物質が普通に売られているということだ。処方箋など関係なくみんな買っていくという。そういえば、豚とかうなぎとか抗生物質づけだというニュースが日本でも話題になったが、人間もまたそうなのである。風邪で医者に行くと薬をだすのでなく、いきなり点滴されるということだ。それで一発で直るというのである。医者に行きますか、と協同研究者の張先生に言われたが、さすがに断った。
帰りは、麗江から上海へ飛ぶはずの予約した飛行機の便が突然無くなり、4時間あとのあとの便に変更になり、上海でゆっくりカニでもたべようなどと言っていた計画がすべてふっとんだ。上海のホテルに着いたのが12時である。翌日、午後二時に上海のホンチャオ空港から羽田へ飛ぶ予定の便が、まだ来ていなくて、これも6時間遅れになるという。これは今日中に帰れるのか、と不安になったところ、プートン空港からは成田行きの便があるからそっちに乗れますという。そこで、航空会社で手配したバスに乗って、何とか夕方までに成田に着くことが出来た。成田で航空会社から羽田までの交通費ということで一人3千百円入りの封筒が配られた。麗江から上海までの飛行機便が突然飛ばなくなった連絡はいっさいなかった。さすがに、日本の航空会社はきちんとしている。ちなみに、全日空である。
日本に帰国して、風邪は何とかなおったが、腰が悪化し、坐ったり立ったりするのがとても辛くなった。それでも次の日は勤め先で、研修会があり、それに参加する。今日は、学会の例会でそれにも顔を出す。学生の前期の成績が公開され、単位を落とした学生の履修相談もメールで入って来る。いやはや、である。
橋后というかなり山奥の、それこそ地元の人しかしらない場所である。観音会の祭りは25日だが、その前夜祭に歌の掛け合いがある。掛け合いはすでに調査してあるのだが、25日の本番の祭りをまだ見ていないので、それを観る野が今回の目的であった。いずれにしろ、24日の夕方に山に登り徹夜をした。歌の掛け合いはあったが、ほとんど年配者の楽しみ程度で、以前にみたような若者の掛け合いはなかった。この山奥でもついに自然な若者の掛け合いは消えたということである。
だが、25日の午前、神懸かりを見ることができた。村人は、観音廟にお参りに来る。観音廟にはいくつかの建物があり、観音や道教の神、仙人などが祀られている。村人は、同じ村の女性である宗教者の女性にお経をあげてもらう。お参りに来るのもほとんど女性である。この観音会は女性の祭りである。さういつた礼拝があちこちで行われるだけで、われわれはだいたいの様子は分かったので、退散しようかという話になったが、私はもう少し粘ろうと言った。
そこでいろいろと聞いて見ると、仙人堂という建物では神懸かりがあるという情報を得た。そこで行ってみると、宗教者にお経をあげてもらっていた一人の中年の女性が突然神懸かりだしたのである。しばらくすると、それを見ていた中年の女性が一人神懸かった。最初に神懸かった女性は、宗教者に神懸かるような依頼をどうやらしていたらしい。それは、体調が悪く、宗教者になることでその苦痛から解放されたいということである。沖縄のユタと同じで、巫病を一つのきっかけにして憑依したということであるようだ。
白族の宗教文化はほんとうに奥が深い。この地域は仏教信仰が浸透しているのだが、実際はかなり自然宗教の要素が強い。若者の歌の掛け合いが消えたのは残念だが、憑依が当たり前のように行われる、女性達の宗教儀礼はまだ続いていくだろう。できればまた取材に行きたい。
だが、さすがに徹夜はこたえた。寒くて、そして眠場所もない。前回は一晩歌の掛け合いがあったから時間を気にすることなくすごせたが、今回は何もないので、一晩寝るしかなかったが、寝ることが出来ずそれが辛かった。それで体力を消耗したが、大理のホテルで一晩ボイラーの音が天上の真上からすごいうなり声できこえてきて、一晩眠れなかった。それがきっかけで風邪を引いた。体力の限界を超えたというわけである。熱が出たが、中国の薬局で買った薬で熱はスグにさがった。咳がでたが、これも市販の薬でだいぶよくなった。聞けば、抗生物質ということだ。中国では市販の薬で抗生物質が普通に売られているということだ。処方箋など関係なくみんな買っていくという。そういえば、豚とかうなぎとか抗生物質づけだというニュースが日本でも話題になったが、人間もまたそうなのである。風邪で医者に行くと薬をだすのでなく、いきなり点滴されるということだ。それで一発で直るというのである。医者に行きますか、と協同研究者の張先生に言われたが、さすがに断った。
帰りは、麗江から上海へ飛ぶはずの予約した飛行機の便が突然無くなり、4時間あとのあとの便に変更になり、上海でゆっくりカニでもたべようなどと言っていた計画がすべてふっとんだ。上海のホテルに着いたのが12時である。翌日、午後二時に上海のホンチャオ空港から羽田へ飛ぶ予定の便が、まだ来ていなくて、これも6時間遅れになるという。これは今日中に帰れるのか、と不安になったところ、プートン空港からは成田行きの便があるからそっちに乗れますという。そこで、航空会社で手配したバスに乗って、何とか夕方までに成田に着くことが出来た。成田で航空会社から羽田までの交通費ということで一人3千百円入りの封筒が配られた。麗江から上海までの飛行機便が突然飛ばなくなった連絡はいっさいなかった。さすがに、日本の航空会社はきちんとしている。ちなみに、全日空である。
日本に帰国して、風邪は何とかなおったが、腰が悪化し、坐ったり立ったりするのがとても辛くなった。それでも次の日は勤め先で、研修会があり、それに参加する。今日は、学会の例会でそれにも顔を出す。学生の前期の成績が公開され、単位を落とした学生の履修相談もメールで入って来る。いやはや、である。
今年もまた古本市のための読書 ― 2014/09/19 13:58
中国から帰って二週間経ってようやく体調が元に戻った。気管支炎と腰痛で一時はかなり辛かった。やはり休養が一番ということだが、直るのに二週間は歳だなと思う。それから、仕事が始まる頃には治る。これも仕事人間の悲しいところだ。
が、寝ていたばかりではない。短歌の評論集を出版するためにこの間原稿を整理していた。順調にいけば今年中には出版出来そうだ。それから、紀要の論文も書いたが、こちらは、前期に学会のシンポジウムで発表した内容に手をいれただけなので、それほど時間はかかっていない。一番時間を取られたのは、古本市のための読書である。
今年の学園祭でも、私の学科の読書室では古本市をやる。そこに出品する売れそうな新刊書を読み、古本にしていくという作業をこの時期二年続けてやっているのだが、今年もその時期になったということである。新刊書を買ってきてそのまま出品したのでは古本にならない。読めば古本になる。そこで、売れそうなエンターテインメント系の本を片っ端から買って古本にしていく。一日一冊が目標である。が、仕事もあるので、一日一冊はなかなか難しい。
それでも、九月に入って以下の本を古本にした。
池井戸潤『銀翼のイカロス』ダイヤモンド社
東野圭吾『パラドックス13』講談社文庫
東野圭吾『マスカレードホテル』集英社文庫
東野圭吾『マスカレードドライブ』集英社文庫
有川浩『空の中』角川文庫
原田マハ『風のマジム』講談社文庫
朝井リョウ『星やどりの声』角川文庫
神永学『革命のリベリオン』新潮文庫
沼田まほかる『ユリゴコロ』双葉文庫
碧野圭『書店ガール1』PHP学芸文庫
碧野圭『書店ガール2』PHP学芸文庫
S・ハンター『蘇るスナイパー上』扶桑社
S・ハンター『蘇るスナイパー下』扶桑社
特にお薦めの本はない。ただ『書店ガール』は書店の内情が分かって面白い。この本、大手の本屋には平積みになってないが、仙川の「書原」では平積みになったていた、だから買った。書店員の好みや気配りで本の売れ行きが違うということの見本だが、この本の内容通りでもある。『マスカレードホテル』もホテルの内情がよくわかる。『風のマジム』は、沖縄(南大東島)のサトウキビを使ってラム酒を作ろうと起業した女性の奮闘記で、実話を元にしている。『風のマジム』は本の中のラム酒の銘柄だが、実際は南大東島の「コルコル」というラム酒。こういう、みんなから無理だと言われながら気力と努力で成功していく物語は何時読んでも面白く元気が出る。
東野圭吾は乱作気味。作品によって力の入れ方がわかる。『マスカレードホテル』は期待したが、うーんと言う感じで、少し無理があるかな。『パラドックス13』の方は時間パラドックスの設定の面白さだが、ラストにもう少し工夫が欲しかった。『銀翼のイカロス』は民主党によるJAL再建をモティーフにしたドラマで、今度は、あのオネエの役人とではなく、政治権力との戦い。同じパターンを何冊も読んでいるので、さすがに以前ほど面白いという印象はない。
『星やどりの声』は家族の絆を描いた作品だが、予定調和的で『桐島、部活やめるってよ』『何者』のよりレベルは落ちる。S・ハンター『蘇るスナイパー上下』は私の好みで、古本市ではさすがにこの手のハードボイルドアクション系は売れない。『ユリゴコロ』は、よく出来ているストーリーだ。結構暗い話である。『革命のリベリオン』はシリーズ第一作。出てくるモビルスーツはエヴァンゲリオンを模したものか。SF好きなのでとりあえず読んで見た。『空の中』は新刊ではないが、SFなので読んで見た。まあまあといったところ。これからまだこの古本にするための読書は続く。
が、寝ていたばかりではない。短歌の評論集を出版するためにこの間原稿を整理していた。順調にいけば今年中には出版出来そうだ。それから、紀要の論文も書いたが、こちらは、前期に学会のシンポジウムで発表した内容に手をいれただけなので、それほど時間はかかっていない。一番時間を取られたのは、古本市のための読書である。
今年の学園祭でも、私の学科の読書室では古本市をやる。そこに出品する売れそうな新刊書を読み、古本にしていくという作業をこの時期二年続けてやっているのだが、今年もその時期になったということである。新刊書を買ってきてそのまま出品したのでは古本にならない。読めば古本になる。そこで、売れそうなエンターテインメント系の本を片っ端から買って古本にしていく。一日一冊が目標である。が、仕事もあるので、一日一冊はなかなか難しい。
それでも、九月に入って以下の本を古本にした。
池井戸潤『銀翼のイカロス』ダイヤモンド社
東野圭吾『パラドックス13』講談社文庫
東野圭吾『マスカレードホテル』集英社文庫
東野圭吾『マスカレードドライブ』集英社文庫
有川浩『空の中』角川文庫
原田マハ『風のマジム』講談社文庫
朝井リョウ『星やどりの声』角川文庫
神永学『革命のリベリオン』新潮文庫
沼田まほかる『ユリゴコロ』双葉文庫
碧野圭『書店ガール1』PHP学芸文庫
碧野圭『書店ガール2』PHP学芸文庫
S・ハンター『蘇るスナイパー上』扶桑社
S・ハンター『蘇るスナイパー下』扶桑社
特にお薦めの本はない。ただ『書店ガール』は書店の内情が分かって面白い。この本、大手の本屋には平積みになってないが、仙川の「書原」では平積みになったていた、だから買った。書店員の好みや気配りで本の売れ行きが違うということの見本だが、この本の内容通りでもある。『マスカレードホテル』もホテルの内情がよくわかる。『風のマジム』は、沖縄(南大東島)のサトウキビを使ってラム酒を作ろうと起業した女性の奮闘記で、実話を元にしている。『風のマジム』は本の中のラム酒の銘柄だが、実際は南大東島の「コルコル」というラム酒。こういう、みんなから無理だと言われながら気力と努力で成功していく物語は何時読んでも面白く元気が出る。
東野圭吾は乱作気味。作品によって力の入れ方がわかる。『マスカレードホテル』は期待したが、うーんと言う感じで、少し無理があるかな。『パラドックス13』の方は時間パラドックスの設定の面白さだが、ラストにもう少し工夫が欲しかった。『銀翼のイカロス』は民主党によるJAL再建をモティーフにしたドラマで、今度は、あのオネエの役人とではなく、政治権力との戦い。同じパターンを何冊も読んでいるので、さすがに以前ほど面白いという印象はない。
『星やどりの声』は家族の絆を描いた作品だが、予定調和的で『桐島、部活やめるってよ』『何者』のよりレベルは落ちる。S・ハンター『蘇るスナイパー上下』は私の好みで、古本市ではさすがにこの手のハードボイルドアクション系は売れない。『ユリゴコロ』は、よく出来ているストーリーだ。結構暗い話である。『革命のリベリオン』はシリーズ第一作。出てくるモビルスーツはエヴァンゲリオンを模したものか。SF好きなのでとりあえず読んで見た。『空の中』は新刊ではないが、SFなので読んで見た。まあまあといったところ。これからまだこの古本にするための読書は続く。
続・古本にするための読書 ― 2014/09/26 23:04
古本にするための読書でこの一週間で読んだのは次の10冊である。
碧野圭『書店ガール3』
井上夢人『ラバーソウル』
伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』
上橋菜穂子『獣の奏者』Ⅰ巻~Ⅳ巻
佐々木譲『地層捜査』
川村元気『世界から猫が消えたなら』
浅田次郎『交霊会の夜』
『書店ガール3』は1~2巻読んだのでおつきあい。最近書店員の活躍が目立つがこの本を読むとよくわかる。ちなみに、『ラバーソウル』の解説は書店員が書いている。書店員が解説まで書く時代になったのだ。うちの学生にも書店員になりたいというものがいる。大変な職業だが、本好きな学生には就職のあてもない図書館司書を目指すよりずっといい。
ちなみに仙川の啓文堂に「書店ガール」は平積みになっていた。啓文堂は文庫の品揃えがいい。文庫を買うときは啓文堂を一応覗くことにしている。『ラバーソウル』はずっと気になっていた本だ。 ミステリー史に残る衝撃などという帯の文句に、動かされて読み始めた。何だただのストーカーの物語かよと半分ほど読みすすめて後悔した。がラストが切ないと書いてあるのでどんなどんでん返しがあるのかと、ただそれだけを期待して、ただひたすら速読した。確かに、最後は予想がつかなかった。しかも泣かせる。600頁の本だが、途中まで我慢しなきゃならないが、最後まで読み切れば満足感は得られる。お薦めである。
『ゴールデンスランバー』は映画を見ているのでストーリーは知っているのだが、本で読むとまた違う。ただ、最近記憶力がわるいので細部を忘れている。その意味では、新鮮さもあった。年老いていくと同じ映画を二度観て二度観た事を気づかないという悲しいことが生じる。それに近い。ちなみに映画の『フィッシュストーリー』はなかなかの傑作である。伊坂ものの映画ではこれが一番好きだ。本は読んでないが。
上橋菜穂子『獣の奏者』も、ファンタジーについて学生に講釈している身としては必読の本。アンデルセン受賞記念で書店に平積みになっているので買う。4冊読破。さすがに面白い。世界観ががっちりと組み立てられていて、物語の骨格に揺るぎがない。逆に言うと、宮崎駿のようなほころびのないのがややつまらない。主人公のエリンは最後こうなるだろうと思わせてその通りになる。案外にリアリズムなのである。
『地層捜査』は職人作家の書いた警察もの。以前なら時効になった事件の再捜査の話だが、よく出来ている。『世界から猫が消えたなら』は期待外れ。もっと奇想天外な展開かと期待したが、生と死、人間の幸福といったことを、まともに描こうとしている。解説の冒頭で「これはすごい小説だ。特別な物語だ」と中森明夫が絶賛している。本気か!と思わず言いたくなった。確かに、生や死について考えさせる契機になる物語なのかも知れない。でも、このタイトルで、この展開はないだろう。『交霊会の夜』もミステリアスな展開を期待したがこれも期待外れ。シャーマンの口を借りて、主人公の人生の悔恨を振り返るといった内容。何も霊に降りてきてもらって悔恨するこたあないだろうと、ついつっこみを入れたくなった。
これでも授業が始まり会議もありで忙しいのだが、古本のための読書はまだまだ続く。
碧野圭『書店ガール3』
井上夢人『ラバーソウル』
伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』
上橋菜穂子『獣の奏者』Ⅰ巻~Ⅳ巻
佐々木譲『地層捜査』
川村元気『世界から猫が消えたなら』
浅田次郎『交霊会の夜』
『書店ガール3』は1~2巻読んだのでおつきあい。最近書店員の活躍が目立つがこの本を読むとよくわかる。ちなみに、『ラバーソウル』の解説は書店員が書いている。書店員が解説まで書く時代になったのだ。うちの学生にも書店員になりたいというものがいる。大変な職業だが、本好きな学生には就職のあてもない図書館司書を目指すよりずっといい。
ちなみに仙川の啓文堂に「書店ガール」は平積みになっていた。啓文堂は文庫の品揃えがいい。文庫を買うときは啓文堂を一応覗くことにしている。『ラバーソウル』はずっと気になっていた本だ。 ミステリー史に残る衝撃などという帯の文句に、動かされて読み始めた。何だただのストーカーの物語かよと半分ほど読みすすめて後悔した。がラストが切ないと書いてあるのでどんなどんでん返しがあるのかと、ただそれだけを期待して、ただひたすら速読した。確かに、最後は予想がつかなかった。しかも泣かせる。600頁の本だが、途中まで我慢しなきゃならないが、最後まで読み切れば満足感は得られる。お薦めである。
『ゴールデンスランバー』は映画を見ているのでストーリーは知っているのだが、本で読むとまた違う。ただ、最近記憶力がわるいので細部を忘れている。その意味では、新鮮さもあった。年老いていくと同じ映画を二度観て二度観た事を気づかないという悲しいことが生じる。それに近い。ちなみに映画の『フィッシュストーリー』はなかなかの傑作である。伊坂ものの映画ではこれが一番好きだ。本は読んでないが。
上橋菜穂子『獣の奏者』も、ファンタジーについて学生に講釈している身としては必読の本。アンデルセン受賞記念で書店に平積みになっているので買う。4冊読破。さすがに面白い。世界観ががっちりと組み立てられていて、物語の骨格に揺るぎがない。逆に言うと、宮崎駿のようなほころびのないのがややつまらない。主人公のエリンは最後こうなるだろうと思わせてその通りになる。案外にリアリズムなのである。
『地層捜査』は職人作家の書いた警察もの。以前なら時効になった事件の再捜査の話だが、よく出来ている。『世界から猫が消えたなら』は期待外れ。もっと奇想天外な展開かと期待したが、生と死、人間の幸福といったことを、まともに描こうとしている。解説の冒頭で「これはすごい小説だ。特別な物語だ」と中森明夫が絶賛している。本気か!と思わず言いたくなった。確かに、生や死について考えさせる契機になる物語なのかも知れない。でも、このタイトルで、この展開はないだろう。『交霊会の夜』もミステリアスな展開を期待したがこれも期待外れ。シャーマンの口を借りて、主人公の人生の悔恨を振り返るといった内容。何も霊に降りてきてもらって悔恨するこたあないだろうと、ついつっこみを入れたくなった。
これでも授業が始まり会議もありで忙しいのだが、古本のための読書はまだまだ続く。
最近のコメント