続・古本にするための読書2014/09/26 23:04

古本にするための読書でこの一週間で読んだのは次の10冊である。

碧野圭『書店ガール3』
井上夢人『ラバーソウル』
伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』
上橋菜穂子『獣の奏者』Ⅰ巻~Ⅳ巻
佐々木譲『地層捜査』
川村元気『世界から猫が消えたなら』
浅田次郎『交霊会の夜』

『書店ガール3』は1~2巻読んだのでおつきあい。最近書店員の活躍が目立つがこの本を読むとよくわかる。ちなみに、『ラバーソウル』の解説は書店員が書いている。書店員が解説まで書く時代になったのだ。うちの学生にも書店員になりたいというものがいる。大変な職業だが、本好きな学生には就職のあてもない図書館司書を目指すよりずっといい。

 ちなみに仙川の啓文堂に「書店ガール」は平積みになっていた。啓文堂は文庫の品揃えがいい。文庫を買うときは啓文堂を一応覗くことにしている。『ラバーソウル』はずっと気になっていた本だ。 ミステリー史に残る衝撃などという帯の文句に、動かされて読み始めた。何だただのストーカーの物語かよと半分ほど読みすすめて後悔した。がラストが切ないと書いてあるのでどんなどんでん返しがあるのかと、ただそれだけを期待して、ただひたすら速読した。確かに、最後は予想がつかなかった。しかも泣かせる。600頁の本だが、途中まで我慢しなきゃならないが、最後まで読み切れば満足感は得られる。お薦めである。

 『ゴールデンスランバー』は映画を見ているのでストーリーは知っているのだが、本で読むとまた違う。ただ、最近記憶力がわるいので細部を忘れている。その意味では、新鮮さもあった。年老いていくと同じ映画を二度観て二度観た事を気づかないという悲しいことが生じる。それに近い。ちなみに映画の『フィッシュストーリー』はなかなかの傑作である。伊坂ものの映画ではこれが一番好きだ。本は読んでないが。

 上橋菜穂子『獣の奏者』も、ファンタジーについて学生に講釈している身としては必読の本。アンデルセン受賞記念で書店に平積みになっているので買う。4冊読破。さすがに面白い。世界観ががっちりと組み立てられていて、物語の骨格に揺るぎがない。逆に言うと、宮崎駿のようなほころびのないのがややつまらない。主人公のエリンは最後こうなるだろうと思わせてその通りになる。案外にリアリズムなのである。

『地層捜査』は職人作家の書いた警察もの。以前なら時効になった事件の再捜査の話だが、よく出来ている。『世界から猫が消えたなら』は期待外れ。もっと奇想天外な展開かと期待したが、生と死、人間の幸福といったことを、まともに描こうとしている。解説の冒頭で「これはすごい小説だ。特別な物語だ」と中森明夫が絶賛している。本気か!と思わず言いたくなった。確かに、生や死について考えさせる契機になる物語なのかも知れない。でも、このタイトルで、この展開はないだろう。『交霊会の夜』もミステリアスな展開を期待したがこれも期待外れ。シャーマンの口を借りて、主人公の人生の悔恨を振り返るといった内容。何も霊に降りてきてもらって悔恨するこたあないだろうと、ついつっこみを入れたくなった。 

これでも授業が始まり会議もありで忙しいのだが、古本のための読書はまだまだ続く。

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