匿名空間2012/06/10 16:54

 日曜日だが授業。といっても八王子校舎で市民講座。日曜日まで仕事か、ということでためらったが引き受けざるを得なかった。車で行く。高速を使って一時間ほど。受講者は6人。採算は度外視といったところか。つまり、学校の市民向けの講座として八王子方面の開拓ということである。かつての八王子校舎の利用という面もある。

 昨日から外付けハードディスクに今まで撮りためていたミニDVテープを記録する作業を始めた。写真はほぼハードディスクに収めたので、ビデオの方に着手。DVDに焼くよりもハードディスクに一括して記録した方が良いと言われてそうすることにした。確かに、DVDはがさばるし保管も大変。ハードディスクにいれておけば、パソコンでいつでも見れるしも必要なときにDVDに焼けばよいのだ。ただ、問題は、VHSのテープで、これがけっこう大量にある。ビデオデッキからパソコンに取り込む専用のコードを購入すればよいが、問題はビデオデッキである。今一台しか手元にない。これが故障したらアウトなので、安いのを買おうと調べ始めたら、ほとんど製造中止。中古がほとんどだ。今VHSデッキは貴重品になりつつあるらしいことがわかった。データの保存は時間がかかるが毎日少しずつやっていくしかない。

 先日久しぶりに昔の知り合いとの飲み会に出席。そこでオウムの菊地直子の事が話題になる。みんなの関心を集めたのが菊地直子にプロポーズした高橋寛人という男である。プロポーズされ自分はオウムの菊地直子だと告白する。それでも男は一緒に暮らし始める。住居を換えてふたりでひっそりとくらしていたが、ついに捕まる。考えてみれば、これって今時珍しい純愛ドラマではないのか。

 吉田修一原作の映画「悪人」の逆パターンだ。妻夫木演じる殺人を告白した男を支え一緒に逃避行を続ける深津絵里が、高橋寛人ということになるか。仮に高橋が私だったらどうか。すでに若くもなく、あまり人とのつきあいもなく孤独な生活のなかで、ある女性と知り合う。思い切ってプロポーズしたら、実は指名手配されているそれでもいいか、と言われる。さあ、あきらめて警察に通報できるか。そんなこと出来やしないだろう。シチュエーションからしてそうとう思い詰めてプロポーズしたと推測できる。とすれば、かなり悩むだろうが、身を隠して一緒に暮らそうということになるのは、成り行きとしてよくわかる。誰もがそういう判断をするとは思わないが、小説の世界ではなく、実際にそういう決断をする人が、いるということに救われる思いはある。むろん、本当のところはわからないにしても、そう思わせるではないか。

 郊外を匿名の空間と名付けたのは誰だっか。安部公房ではなかったかと思う。今までオウムの逃亡者はほとんど郊外に隠れていた。郊外は日本で一番隠れやすいところなのだ。無人島に逃げたのは市橋だったが、長続きはしない。菊地もまた、町田、相模原、という郊外都市に隠れていた。日本の郊外はまだ匿名性を失っていないということなのか、それとも、防犯カメラが郊外のいたるところに設置されてそんなことを許さなくなっているのか。どうも後者のような気がする。高橋克也は何処へ逃亡するのだろうか。今、日本に高橋が身を潜める匿名空間はあるのだろうか。

       帰るべき巣のない烏夏の夜

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