また「美しい日本」か2012/12/19 00:11

 しばらくブログを書いていない。いつものことだが、いろいろと忙しかった。原稿を書き、市民講座の準備があり、雑務が重なり、忘年会がありと、あっという間に今年の残りも少なくなってしまった。気がついたら衆院選も過ぎてしまった。

 日曜は市民講座で八王子まで行き、夕方からは近くの料理屋で鍋を囲んでのマンションの忘年会。花見と忘年会の時だけ顔を合わせる住人もいる。最近、三軒ほど引っ越していって、その後に若い人が入った。工業デザイナーと映画関係の人である。映画関係の人は助監督をやっているとのこと。この辺り、東宝撮影所が近いということもあって、映画関係の人が多い。いろんな職業の人がいるので自己紹介で盛り上がる。

 選挙結果は予想通りだが、自民党が勝ちすぎだとみんな思ったことだろう。自民党の得票数は大敗した前回の得票数を下回ったという。それでもこんなに議席を獲得したのは、小選挙区制のいたずらである。反原発は風にはならなかった。やっぱり、生活の安定を選んだということか。民主党の理想主義に懲りたから今度は現実路線にということだろうが、そう上手はくいかないだろう。

 安倍総裁は「美しい日本」というけれど、一方で 日米同盟強化という。日米同盟を強化すればTPPにさ参加せざるを得ず、日本は激しいグローバルな自由競争経済にさらされ、農業は壊滅し、安倍の言う美しい日本はたぶん消えて無くなる。グローバルな自由主義経済下では、日本の労働者の労働価値は、ミャンマーあたりの低賃金労働者並にみなされる。従って、日本では格差社会がもっと拡大し、労働者の七、八割は低所得者層になる。これが安倍の目指す「美しい日本」が待っているジレンマである。

 今度の選挙で格差社会の是正をどの党も積極的に言わなかった。前回の選挙では争点だつた。格差社会の是正を唱えて民主党が大勝したのに、民主党が失敗したので誰も言えなくなった、ということか。自民党は経済の活性化を唱えるが、経済の活性化は現在のグローバル経済では格差を拡大するだけである。財政再建という名目でおそらく社会保障費を削り始めるだろう。経済成長の名のもとに弱者切り捨ての社会になりそうな気がしてならない。

 私は、毎年中国へ行って調査しているので、中国との関係が気になる。中国も国家主義だし、安倍も国家主義。どう考えても関係が良くなるとは思えないが、緊張安定でいいから、何とか穏やかにというのが、中国経済に生活がかかっている多くの日本人の本音だろう。ある意味で私もそうだ。

 日本の右傾化をみんな不安がっているが、中国との関係が悪化すれば経済成長は止まるし、格差が広がれば政権は持たない。この国は右傾化も左傾化も無理なのだ。膨大な借金、少子高齢化、グローバル経済での敗北、これらを解決出来なければ右も左もない。北朝鮮のような崖っぷち独裁国家に退行しない限りは、右へ曲げようとしても簡単には曲がらないだろう。安倍が右に見えるのは、中国や北朝鮮という一党独裁国家に対抗しようとするからだ。

 日本は、格差が広がり餓死者がたくさん出たらかなり動揺するだろう。北朝鮮のようにミサイル打ってごまかすほど未成熟な国家ではない。中国との関係を考えれば、国家主義は自制的にならざるを得ないはずだ。アジアとの関係において国家主義を優先させるのは余りにもリスクが大きい。一度武力衝突が起きたら、日本の経済は壊滅的になるはずだ。アメリカも日本が中国と対立するのを望んではいない。国益をそこなうだけだからだ。とすれば、国家主義より実利的な経済優先の外交をせざるを得ない。それが今日本の置かれた立場である。中国に屈したくはないが、何とか摩擦は避けたい、というのが保守政治家の本音であり中国も同じだ。その本音をもう少し語り合う関係にしていくことが必要だろう。

 おそらく、これから、日本は緩やかにギリシア化するしかないだろう。とすれば、そうなっても何とか相互扶助的な仕組みを作って楽しく生きていかれればいい。国が破綻しても、楽しく何とか生きていられれば、それこそ「美しい日本」である。私はそういう意味での「美しい日本」を作って欲しいと思う。安倍首相には無理だと思うが。