こういう授業一度はやってみたい2012/07/29 15:51

 暑い日が続く。チビが大変である。昼間は家でクーラーをつけているが、人間が出かけてチビが留守番の時どうするか悩む。クーラーを30度にしてつけっぱなしで家を出る。といっても半日程度のことではあるが、この暑さ、毛皮を脱げない犬は大変である。特に、わが家は、南西の角部屋で最上階であるから、日当たりが半端ではない。早く、山小屋へ行きたいが仕事があるからそうはいかない。

 今週の読書。クライブ・カッスラー『フェニキアの至宝を奪え』(新潮文庫上下巻)、マルク・エルスベルク『ブラックアウト』(角川文庫上下巻)、東野圭吾『プラチナデータ』(幻冬舎文庫)、北川智子『ハーバード白熱日本史教室』(新潮新書)である。一週間でよく読んだなと自分でもあきれる。

 最後のをのぞけばバザーを兼ねた古本市出品のための読書なので、どうしても売れるような、ミステリーとか冒険活劇とかハードボイルド、エンタメ系になる。こういう本の読書は時間がかからない。内田樹は『街場の読書論』で、読書にはscanとreadがあると書いていた。つまり、scanするように読むのと、その内容を味わうようにきちんと読むreadである。だから、このところの私の読書はscan読書ということになる。だから早いのである。厚めの文庫本でも一日あれば十分である。通勤の途中、仕事の合間に空いた時間のscan読書で読み切ってしまう。

 クライブカッスラーはいつもの海洋スパイ活劇。それほど時間を忘れるということはなかった。むしろ『ブラックアウト』の方が読み応えはあった。これはヨーロッパでのテロによる大停電を描いた、一種のパニックもの、といったらいいか。大規模停電が次第にヨーロッパ各地を破滅的な状態にしていく様子がかなり細かく描写されている。人類を破滅させるウィルス感染パニックものの停電版と言ったところ。ヨーロッパの原発もメルトダウンをおこすが、日本のフクシマがやたらに例として出される。

 文明社会にとって停電がどれほどの惨事かを容赦なく描いている。やや大げさだとは思うが、フクシマの事故の後ということもあって、けっこうリアリティがある。この惨事を救うのが、もと左翼のプログラマーでさえない中年のイタリア人。元CIAじゃないところがいい。これでもかというくらい悲惨な目に会いながら立ち上がっていくところがスゴイというか、作者がちょっとしつこい。

 さて東野圭吾の『プラチナデータ』は東野に感服。うまい!。よくこういうストーリーを考えるものだ。プロ中のプロというのはこういう作家をいうのだと思う。とにかく、読み出したら止められなかった。

 北川智子の『ハーバード…』はただ感心するばかり。著者は、理系を学んだのに、大学院では日本史専攻に変わり、ハーバードで日本史を教え、体験型もしくはグループワーキング方式の日本史の授業をはじめて、超人気の授業にしてしまった。こんな授業私もやってみたいとただ感服。最近、学生参加型のグループワーキングを主体にした基礎ゼミの授業アンケート結果が思わしくなかったので、落ち込んでいた。授業の意図が学生にあまりつたわらず、何を目的にやっているのかわかっていない学生がいたということである。

 ハーバードで、日本史をグルーブワーキングで行う、というところがスゴイし、その準備も、それを可能にするハーバードのシステムもすごい。日本の大学でも出来ないことはないと思う。ただ、全員に映像作品を作らせる設備や、十数名の受講者に大学院生を一人ティーチングスタッフとしてつけるとか、こういう体制を備えている大学はまだあまりないだろう。しかも、授業結果のアンケートによって教員のランキングが公表される、という厳しさも日本にはない。だが、教員の一人としてこういう授業の成功体験例を読むとやはり刺激される。大変だとは思うが一度はやってみたい。