サバイバルの時代に思うこと2012/02/14 00:31

 12日は一年遅れの卒業パーティであった。いつものディズニーホテルで。風邪気味だが出かける。去年、卒業パーティを3月16日に予定していたが、3.11の大震災で中止になった。あの時の記憶がまたよみがえる。ホテル側との交渉や、払い込んでいた会費を払い戻すなど、いろいろ大変だった。でも、是非、卒業パーティをやりたいという卒業生の思いや、助手さん達の熱意が、卒業生に連絡をとり何とか一年遅れの卒業パーティにこぎつけた。その熱意と実行力、たいしたものである。

 さすがに、たくさん集まるというわけにはいかなかったが、でも、七十名近くが集まった。これだけ揃うと、会場にミッキーマウスとミーニーが来てくれる(百名くらいになるとドナルドも来てくれます)。現れると、みんな大騒ぎ。ここで卒業パーティをやる理由がよくわかる。

 一年経つということは、みんな社会人になっていろいろ体験しているということである。私のテーブルにいた卒業生の一人は、仕事があまりに厳しく精神的に参ってしまって仕事を辞めたと言っていた。やはり、社会は甘くない。でも、こうやって顔を出して楽しそうにしているので安心である。

 挨拶のコメントで、これからはサバイバルの時代だから、一人で生きると思わずに人との関わりを大事にした方がいいよ、というような話をした。「絆」という流行の言葉は好きではないが、大震災の悲惨な状況の中で生まれてきた、サバイバルの知恵であることは確かだ。「絆」について、自分をしっかり持たないと人に振り回されることばだよ、とコメントした教員もいたが、自分を持つとか持たないとか考える前に生活出来るか出来ないかというぎりぎりの状況に追い込まれたときに必要とされた言葉だと考えたい。

 わが女子大は女性の自立をうたっているけれど、自立するということは、一人では生きられないことを知ることでもあろう。ワーキングプアにならずに済んで、それなりの関係にも恵まれている人たちが、努力しなきゃ駄目だとか、自立しろ、とか語っても、誰も信用しない時代になっているのである。つまり、今大学で自立を言うことは、こういう時代の厳しさを勘定に入れていないところがある。とりあえず、何とか食べていけよ、一人で生きるのはけっこう厳しいぜ、というのが、たぶん今最も有効なメッセージだ。

 大学の文系の人気がないのは、いまだに自立とか言っているからだと思わないことはない。高度成長期の恩恵を受けた生活の厳しさを知らない教員が、抽象的に人間の自立を言っても、ワーキングプアになったらあんた自立出来んのか、と反論されて黙ってしまうのが落ちだ。大学の教員は職を失ったときにあわてふためくだろう。プライドが高いから仕事を選ぶだろうし、結局、働く事も出来ずにワーキングプアまっしぐらになるのが落ちだが、日本の役人と同じで、なかなか潰れない職場なので、そんなことは少しも考えない。

 「トスカーナの休日」というダイアンレイン主演の映画があった。アメリカの女性作家がイタリアのトスカーナの地に癒やされそこに住むという話だが、そこで買った家の修復に労働者が働きに来る。その中の一人は教養がありそうな初老の男だったが、元東欧の国の大学教授だという。ベルリンの壁崩壊後、経済が行き詰まり、出稼ぎに来ているという。

 中国の大学教授だつて、文革の頃はひどい目に遭い、貧乏な暮らしを強いられてきた。日本の大学教授は、私もそうだが幸せなものである。テレビのインタビューである若者が、日本は早く破綻した方がいい。俺たちは失う物がもう何もないから、その方がいい、と話していたのが印象的であった。数年後には現実になるかも知れない。そのとき、いちばん辛いのが私たちのような層だろう。そうなつたら困るが、でも、そうなったときに老年の私がどう生き抜いていくのか。これでもプライドは高くないのでどんな職業にも就ける自信はある。後は体力勝負だが、それだけは自身はないが。

 しかし、考えて見れば、仮に、巨額の債務によって国家が破綻すれば、それは、マルクスが予見した資本主義の破綻の一形態であり、一種の革命前夜の状態なのではないか。違うとすれば、革命を担う主体がマルクスやレーニンが考えたようなものではないということであろう。プロレタリアートの党などもうない。知恵と工夫を持った人たちの共同体が、地道に社会を再建していく、ということになろうか。それもいいのではないかとふと思う時はある。

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