覚悟のようなもの2010/11/22 01:31

 今日21日は推薦入試である。推薦なので面接のみで、一般試験のように試験で合否を決めることはない。ただ、ここ数年受験者が減っていることが気になる。

 特に短大の受験者が減っているが、どうもどこの短大も皆苦戦しているらしい。原因は、リーマンショック以降の不況による就職難である。ここのところテレビは、就活特集をあちこちでやっている。特に大学は今の時点での内定率が50%台なのでこれは大変と取り上げている。短大は30パーセントを切っているということだ。こっちのほうが大変である。

 特に就職難は女子大を直撃している。いわゆる一般職の募集を企業がかなり減らしている為で、短大生にはとても痛い。わが短大は就職の内定率はそんなに悪くはないのだが、やはり、短大は就職が難しそうという一般的イメージが志願者減になっているようである。
教員は教育をやっていればよいと、就職対策などにほとんど関心を持たなかったが、さすがに、こういう事態になるとそうも言ってられなくなった。

 就職指導の担当者に聞くと、内定をとれない学生の特徴は、自分をうまく表現出来ない、コミュニケーション能力がもうひとつ、有名な企業ばかり受ける、何回も落ちると途中であきらめる、ということだそうだ。気になるのは、やはり自分をアピールする力が弱いという問題である。大企業の人事担当者が、発展途上国の留学生に日本の学生はとてもかなわない、必死さが違うというようなことをテレビで発言していたが、結局、表現する力は、技術ではなく、生きようとする力の迫力のようなものに最後は帰するのではないかと思う。

 社会に出ていくということは、生きるためには仕事をしなければならない、最後はどんなところでもいいとにかく食っていかねば、という覚悟が必要であるということである。かつての日本人も今の発展途上国の人たちもそういう覚悟で生きて来たし、生きている。実際、現場で仕事をしているものは、仕事の好き嫌い以前に、そういう覚悟をもたなきゃとても仕事というものは続けられないものだ、ということを知っている。人事担当者は、面接で、学生が仕事への希望や豊富を語るのを聞きながら、そんなに甘いもんじゃ無いぞと、たぶん、冷ややかに聞いているはずである。 

 本来、教育とは、様々な個性を持った学生をみんな同じように、元気に自分をアピールできるように改造することではない。確かに自分をアピールするプレゼンテーション技術は教えられるが、その技術は、みんなが同じ声の高さで同じように硬直した表情で、私の長所は~です、と発声する、非個性の同一化の技術であって、ある意味では、人並みのことはできますという能力を教育することでしかない。

 教育などというものにどれほどの力があるかわからないが、学び取って欲しいことは、この社会というのは実に多様な面を持っていて、その多様さにどんな風にも適応可能な柔軟で幅の広い身のこなしを身につけることだ。中小企業でも、農業でも、営業でも、あるいは、夢を持ちながらとりあえず仕事をするでもいい、どういう生き方にしろ、したたかに適応しながら、目標を持って生きればいい。そして、それを持続すれば、そのうちなんとかなる、のである。

 このように考えて、何処でもいいから就職すれば内定率も上がるのだが、現実はそうはいかない。学生はやはり条件のいい会社を選ぼうとする。当然であろう。とすると、人間覚悟があれば生きていけるよ、なんていうのはだめで、プレゼンテーションで人に勝つためにはどうすればいいかということを教えなきゃいけない。従って、結果的には同一化でしかないプレゼンテーション力を磨かせる教育をやっていくしかないのだ。とにかく、この学生は、表現する力がないと思われないために、つまり、そこで排除されずにみんなと同じ競争が出来るところまで残れるようにするしかない。

 最後にものをいうのは本人の、覚悟のようなものである。その覚悟は、とてもじゃないが教育で教えるのは無理である。たぶん、学生は大人から学んでいくものなのだと思う。それを見せられる大人がどれだけいるだろうか。私にあるか、と問われたら、あると答える自信はない。

                        冬めきて樹の覚悟など思いけり

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://okanokabe.asablo.jp/blog/2010/11/22/5524882/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。