最強の教師2009/11/24 00:53

 昨日今日と出校。昨日は推薦入試。今日は通常授業である。推薦は指定校推薦で、面接を行った。私の属する学科には、文学の創作コースというのがある。小説家に指導してもらっている。面接をしていると、作家志望の受験生がけっこう多い。なかには、短大の2年間のあいだにデビューできたらいいと堂々と語るものまでいる。かつてはこういう高校生はいなかったと思うが、時代の変化だろうと思う。

 彼女たちがどういう本を読んでいるかというと、だいたいがファンタジーかエンターティンメント系である。私の知らない作家ばかりである。芥川賞系の作家の作品は読まない。むろん、近代作家の作品も古典も、だいたいが教科書で読んだ、である。本を読んでいなから小説がかけないというものでもないだろうが、でも、やっぱり基本は基本だ。ちょっと不安だが、でも、その志は悪くはない。がんばって欲しい。

 作家以外に出版社で編集をやりたいとまじめに語る受験生もいる。むしろ、こっちの方が心配で、現実を見れば、短大で出版社にはいるのはまず無理、四大だってかなりの狭き門だろう。だいたい斜陽産業だから、募集だって少ない。つまり、面接しているこちらもつい無理だよ、と口に出しかかるのだが、それを言ってしまえば夢をつぶすことになる。だから、努力すれば、実現する可能性はある、と答えることにしている。

 ある受験生にけっこう厳しいよと答えたが、何かこちらに質問はあるかと言ったところ、先生方はわたしの夢を応援してくださいますか、と逆に問いただされた。さすがに、言い過ぎたかなと反省した。本当は受験生だって現実の厳しさはわかっているのだと思う。でも、受験の動機を聞かれれば、そう答えるのが無難だということなのだろう。が。中には真剣な受験生もいる。そういう場合、うちじゃ無理だから他に行った方がいいよ、と言えないところがつらい。一人でも多く入れないといけないからで、そんな余裕はないからである。

 でも、ひょっとしたら、彼女たちの中から作家デビューを果たすものが出るかもしれないなどと夢見ている。みんな可能性は持っている子たちだ。どんなふうに変化するか誰にもわからないはずだからだ。

 就職は、職につくことで社にはいることではない、とよく言われているが、確かにその通りで、編集職につきたいというのなら、方法はいくらでもある。だいたいほとんどの編集者は個人営業だからだ。就社できなくても、職を身につけることはできるのだ。だが、今の学生はほとんどが就職ではなく就社希望である。しかも大手をまずは希望する。安定した生活と名前が欲しいのだ。だが、そんなうまい話はそうはない。

 就社なら、快適に働けそうだと思えばどこでもいいじゃないか、と思う。就職なら、それこそ会社ではなく、職を身につけることを優先させることだ。時間はあるのだから。就職について話す時に、だいたいそんなことを話すのだが、やはり、誰だってそうだが、みんな仕事と理想とを一致させたいと思っている。自分を賭けるに足る仕事をしたいと思っている。それは大事なことだが、仕事は生活そのものでもある。とりあえず安定した生活を確保して、人生を楽しむ、それも立派な自分を賭けるに足る生き方である。そのための仕事選びであってもいいのである。

 今年は、就職が厳しい。氷河期よりひどい状況である。リクルートスーツを着て就活している学生を見ると、たくましいなと感じる。面接で夢を語っていた時から間違いなく成長していると思うのだ。現実の厳しさに直面していろんな事を学んだことだろう。現実というのは、私などが束になってもかなわない最強の教師である。

   最強の教師になりたし厚着する