プレゼンの失敗2009/10/03 22:34

 今日は、AO入試の面談と補講の授業。24日に第三者評価の実地調査で私の授業を休講にしたものだから、今日その補講をやることになった。もともと受講人数の少ない授業なのだが、さすがに今日はかなり少なかった。最近はどこの大学でも半期15回の授業を必ずやるようになってきていて、従って休講にすれば、その分、かならず 補講をしなければならない。昔のように休講ラッキーと学生もよろこばないし、今日はちょっとだるいから休講にしちゃおう、なんてことも難しくなった。昔(非常勤の頃)はけっこう休講にしてました。

 後期が始まって一週間たち、またいつもの疲れが始まって、しんどい毎日である。万葉のシンポジウムが終わり、「アジアの歌の音数律」の出版趣意書を書くために、「アジア民族文化研究」のそれぞれの発表者の論文を読み、要約する作業に入った。けっこう時間がかかった。かつて予備校で現代文や小論文教えていたとき、私は要約をやらせたら日本で5本の指に入ると浪人生の前で豪語していたが(ほんとにただの法螺です)、まあ自信がないわけではない。だが、さすがに、難解な論があって、5回は読んだろうか。何とか理解出来た。ここまで読み込むと、書いた本人よりもたぶん理解出来ているはずである。一週間で何とかやり終え趣意書も送れる手筈になった。

 全体をまとめてみて、これはひょっとすると画期的な論集になるのではないかと思うようになった。日本の短歌、漢詩、南島歌謡、アイヌの神謡、ホジェン族の歌謡、中国西南各少数民族の歌、台湾アミ族の歌謡、それらを音数律という視点から全部眺めてみるという試みは初めてのはずである。むろん、ただ比較するのではなく、音数律そのものが確認できないケースもあったり、あるいは、無いという場合もあって、歌や詩にとって音数律とは何かという問題を論じることにもなっている。音数律を通して、声の歌謡の多様性と、文字化される歌、あるいは詩の成立の問題が見えてくる気がした。企画編集者としてうまくいくことを願っている。

 『柳田国男・主題としての日本』柳田国男研究6、柳田国男研究会編・梟社刊、が刊行された。私が今年の五月に書いた論文が載っている。こんな風に一冊の本にはいるとなかなか見栄えのする論になるから不思議である。それなりに苦労して書いた論だから、満足感はある。『先祖の話』を読む、といったタイトルだが、数年前に書いた『明治大正史世相篇』を読むの論と続けて、柳田の書いたものを「読む」作業を続けているのだが、この作業、継続でやっていこうと考えている。

 今日のニュースは、東京オリンピック落選の話題で持ちきりだったが、当然だろう。盛り上がりの欠ける招致活動だということはみなわかっていたのに、そのことを一応落ちるまではメディアは一言も言わなかった。盛り上がりに欠けた理由は、結局オリンピックをやる根拠がいい加減だったと言うことに尽きる。当初オリンピック誘致を思いついた石原都知事の言ったことは東京の経済活性化だった。ところが、さすがにそれでは理由にならないので、環境問題を持ち出してきた。国民はその経緯が分かっていたから、のらなかったのだ。

 確かにオリンピックの経済効果は大きいだろう。でも、その発想は、公共工事で景気を良くする、というのとそれほど違わない。そんな日本の経済のためにオリンピックを利用されたくないというのが、各委員が東京に票を入れなかった理由だろう。シカゴもまた同じだとみなされたのだ。 

 プレゼンテーションでの15歳の帰国子女の英語のスピーチは立派だった。私の学科で英語スピーチコンテストをやっているが、たぶん優勝だろう。でも、全体的に固かった。あまりに立派すぎて聞いている者が引いてしまうくらい立派だった。余裕がないのだ。これは15歳の帰国子女のせいではなく、もう環境問題で訴えていくしかないという切羽詰まった日本のやり方の問題である。

 私が今年「基礎ゼミナール」のテキストを作ったとき、プレゼンテーションの方法についても書いた。そこで、熱意の感じられないプレゼンテーションは失敗である、と書いた。日本のプレゼンは確かに熱意はあったが、やや的外れもしくは空回りの熱意であった。原因は、プレゼンの内容に誰も自信を持っていないからである。環境問題は、私たちの国で初めてのオリンピックを開きたい、といったわかりやすいものではない。ほんとに環境のことを考えるなら、オリンピックなどやらない方がいい。そのような極めて当然のことにたぶん気付きながら、そのことと反対のことを熱意をこめてプレゼンしなければならない。プレゼンが失敗して当然である。

                          秋高し祭りの準備に声荒げ

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://okanokabe.asablo.jp/blog/2009/10/03/4613569/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。