選挙雑感2009/09/01 01:45

 選挙は予想通り民主党の圧勝であった。一応民主党に投票したので、まあよかったというところだ。ただ、私はどちらかと言えば無党派層に入るから、政権交代は支持したが、政策には不安なところがある、という大方の世論と同じ気持ちである。

 さすがに政権交代というインパクトは強かったのか今日のテレビはそればかりである。日テレだけが、24時間マラソンの珍獣芸人イモトを繰り返し放送していた。それにしても珍獣芸人というのは凄いネーミングである。局の都合とは言え、政権交代の番組と張り合っていたのだからたいしたものだ。もっともほとんど観なかったけれど。

 この選挙で感じたのは、弱者という言葉がかなりキーワードとして出てきたこと。これは悪くないことだ。政治とは、自力では生きる術を持てない弱者を救うことである、という基本的なことが見直されたことはいいことである。自民党は、去年のサブプライム大恐慌以降、この基本原則に鈍感であった。派遣村を政治的なパフォーマンスだとし、職に就けないのは努力がたりないからだという自己責任論で切りぬけようとした。この鈍感さが結局は国民の怒りを買ったのだ。

 いろんな候補がいたが、感心したのは、長崎で元防衛長官を破った福田衣里子の演説である。あの細い身体で、弱者の視点から聞く者の心に届く言葉はすごかった。昔、全共闘時代、多くの学生がアジテーションをしていた。私もアジテーションをよくしたが、あの時代に戻ればまさに最高のアジテーションだったろう。C型肝炎訴訟団で厚生省とやりあった度胸はきちんと発揮されている。この人政治家としてかなり人気が出るだろうなと思う。

 政治の方向はアメリカと同じで、格差を野放図に生むグローバリズム資本主義を抑制しながら、弱者に目を向け、社会の公平性とのバランスをどう取っていくのか、という政治手法になるだろう。中流幻想が崩れ、日本人のほとんどが、自分もワーキングプアになるかも知れないという危機感をもってしまったのである。景気が良くなれば解決するという言葉を信じるものは誰もいない。景気が良くなっても、企業による利益の再配分が労働者にいかない構造があるかぎり、何も解決しないことを知ってしまったのである。だとしたら、収入が低くても失業しても、何とか暮らせるセーフティネットを充実させる政党を選択せざるを得ない。これは日本だけでなく、アメリカでもそうであり世界的に共通の流れとなるはずだ。

 とすれば、世界の国々は、資本主義グローバリズムと福祉的国家とのジレンマにみな共通して悩むということになる。おそらくその先頭を走っているのが日本である。セーフティネットに金を使わなければ政権交代となってしまうことが明らかになったのである。とすれば、自民党も同じ政策で対抗せざるを得ない。しかし、金はない。どうするのか、無駄を省くだけでは足りない。増税でも限界があろう。平和主義というのはこういうジレンマの解決策として現実味を帯びる。実は、最大の無駄は軍事費である。何故なら戦争がなければ軍事費はいらないからだ。むろん、戦争を無くすことは不可能なのだとしても、このジレンマがすすめば、軍事費を削らなければならなくなる。アメリカが、核廃絶を言い出したのもそういう理由からだろう。

 ということで、この政権交代、とりあえずは少しはましな方向へ進むきっかけになるとと信じたい。

            選挙後の勝者敗者に野分かな