小動物との共生2009/06/10 00:16

 自己点検評価報告書の提出時期が近くなり、完成へ向けて追い込みとなった。文章の書き直しや訂正が山ほどあり、その作業にここんとこかかりきりである。私は一応文章のプロだとは思っているが、この手の事務的な文章は苦手で、私が書いた文章も事務方に結構直されている。まあ仕方がない。名文を書く必要は無いし。ただ私の場合口語的な文体になりがちなので、そういうところが指摘されるようだ。

 今日の夕方は、新宿の工学院大学というところへ行ってきた。そこで孔子学院のカルチャーセンターが開かれていて、私が一日だけ講師として呼ばれたのである。初めて入ったが、高層ビルの中にあるそれこそ高層ビルの大学である。

 私の話すテーマは「中国西南地域の神話」で、洪水神話の話や、怒江流域の創世神話、そしてワ族の神話について話をした。年輩の方が多く、みなさん熱心に聞いてくれた。

 ワ族の神話は、去年の夏取材したものを用いた。シガンリという神話だが、この神話で面白いのは人間と小動物との共生が語られる点だ。例えば、人間はシガンリという洞窟に最初入れられていたが、蠅と雀のおかげで洞窟から出ることができる。また、洞窟の出口で虎が待ち構えていて人間を食べてしまうのを、鼠のおかげて虎から逃れる事ができる。このように小動物のおかげでワ族の先祖はこの世に現れたというわけだ。だから、蠅には食べものの残りにたかることを許し、鼠が倉庫でお米を少し食べるのも仕方がないと考え、雀がお米を啄むのも許している。

 ワ族は、収穫のために人間の首を狩っていた民族だが、こういうようにとても優しい民族なのである。普通はこういう小動物は害虫として駆除の対象にしてしまうが、ワ族は共生の道を選ぶ。お互い様だからという説明を神話ですることで。

 こんなに優しい神話を持っているのに、人間の首を狩るのである。文化とは不思議なものである。

 優しいといえば今日のニュースステーションで、足利のこころみ学園の「ココ・ファーム・ワイナリー」特集があった。私が好きなところで、何度か訪れている。知的障害者の学園だがワイナリーを経営し、そこで作るワイン、特にスパークリングワインは極上である。確かこのブログでも紹介した記憶がある。

 ここの知的障害者たちもすでに80歳を過ぎたお年寄りになっている。でもみんな元気だ。そして優しい顔をしている。川田園長も88歳になっていた。車椅子で、とてもいい顔のお年寄りになっている。こころみ学園の知的障害者のお年寄りの顔とそう変わらない。これは誉め言葉である。知的障害者の若いときの顔はやはり健常者とは違うが、お年寄りになってくると、しかもとても幸福そうなお年寄りだと、みんな同じ顔になる。ああ人間というものは上手く出来ているなと思った。私もあんな風に歳を取れたらいいのにと本当に思った。                         
   
         蠅だって誰かのために飛び回る

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