外的自己と内的自己2009/02/19 00:42

 疲労困憊でブログを書く元気もない。タフなつもりでいたがここんとこさすがにまいった。中川大臣のように、失態をしでかして(首にならない程度に)、学科長を解任、ということになったらどんなに助かるか。任期はあと1年だが待ち遠しい。

 私は酒が飲めないのであんなにろれつが回らなくなることはほとんどんない。だいたいちょっと飲み過ぎるとすぐに気持ちが悪くなってしまう。その意味では酒での失敗はしそうにないのだが、ただ、あんな風に酔っぱらいたい気持ちは分からないではない。

 岸田秀の心理学分析にならえば、彼は外的自己と内的自己の分裂の幅が大きすぎたのである。彼の内的自己は自信なさそうでたぶんコンプレックスをかなり持っている。東大出の官僚達をあごで使いながらも、漢字が読めない教養のなさを笑われているんじゃんないかと内心はそうとうプレッシャーがあったろう。外面の強面ぶりは、内心の弱さを見せまいとするバリヤーでもあったのだ。

 だいたい、保守派の政治家はこの手の人が多い。安倍元総理もそうだ。共通するのは、個人や生活の価値よりも国家の価値を優先する国家主義者であること。つまり、権力そのものである国家を絶対化し、それを自分の思想的な装いとすることで、政治家としてあるいは権力家としてふるまう自分を支えようとする。もともと、自分の意志というより親の遺産を継承して政治家になった人たちだから、内面的な根拠など最初からないし、それを作る必然性も持っていなかったはずだ。だとすれば、内面に自信のない自分を偉く見せるのは、とりあえず誰もがひれふする国家主義者になるしかない。2世、3世の頼りなさそうな政治家がみな保守的な国家主義者になるのは、だいたいそういう理由による。  

 ところが、そうであるからこそ、外的自己と内的自己の分裂はひどくなる。自分の内面をかくすために権威的な外的自己をより拡大する。内と外の差はどんどん大きくなる。心理学的には、この差は一定の限度を超えると人間の心を壊してしまう。

 かつて羽田沖で逆噴射して飛行機を墜落させた機長がいた。確か、操縦に自信が無く、いつも過度の緊張に神経を磨り減らしていた。つまりパイロットという外的自己と自信のない内的自己との差が限度を超えてしまった。そこで、その差を一挙に縮めようとした。どうしたかというと、外的自己を壊せばいいのである。つまり、墜落することでパイロットである自己を壊したのである。

 中川大臣を見ているとどうも同じことをやっているように見える。一番やってはいけないタイミングで、やつては行けないとわかっていたことをやってしまうのは、つまり、無意識ではそれをあえてやりたかったということである。大臣であり政治家である外的自己を壊したかったのだ。そうすることで、外的自己と内的自己とを一致させたかったのである。

 安倍元首相も同じである。一番辞めては行けないタイミングで体調を崩して辞めたのは、これも外的自己の破壊である。二人とも国家主義者で、タカ派と呼ばれ、権力的であろうとした政治家である。が、一方で内面では、そのような外的自己を支える必然性も思想もあまりなかった。日本の保守的政治家の貧困さをこの二人は象徴しているように思う。

 それに比べると麻生首相は、外的自己と内的自己の分裂があまりないように見える。どういうことかと言えば、どうもどちらもいい加減で、漢字が読めなくてもあまりこたえているようすもなく、コンプレックスもないようだ。それよりも、権威的であろうとする外的自己をあまり作らない。どうも内的自己も外的自己も、あまりつきつめて極めようとするタイプでない。ようするに典型的な遊び人のお坊ちゃまで、こういう人は自分を嫌いになることはまずない、だから、自分を壊してしまうと言う衝動などとも無縁だろう。

 総理にはどうかと思うが私は人間的には嫌いではない。何となく緊張感がないので、どうも100年に一度の大不況が、ちっともそのように感じられないのは、この人が総理をやっているせいだろう。

 私はどちらかと言えば中川タイプだろうか。麻生タイプでないことは確かだ、だいたいおぼっちゃまじゃないし。でも、外的自己と内的自己の分裂があるのかというと、そんなに無いような気もする。自分のことはよく分からない。

 久米宏の番組で、最近の若い男の子の特集をやっていて、草食男子、というテーマ。欲望をあまりもたずに、いつも待ちの姿勢で、女の子に告白されたいと思う、内向きタイプのことで、最近多いらしい。草食男子かどうかのチェックがあったが、10個のチェックポイントの内で私は4個あてはまった。出演者の男性は2個。微妙な数だが、私は世代としては、肉食男子の世代だ。その世代の中では草食男子であることが判明した。やっぱりなあ、という感じで、外的自己と内的自己の分裂があまりないと思うのもそんなところに理由があるのかも知れないと思った。中川さん、肉食の固まりみたいな顔しているからなあ。 
                
     醜態をさらす人あり春寒き

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://okanokabe.asablo.jp/blog/2009/02/19/4129106/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。