旦過の湯2008/02/26 23:10

 週末は山小屋だった。かなり雪が積もっていて、ついたときに家に入るのに苦労した。こういうときのために此の時期には車にはいつも長靴を積んでおく。それが役にたった。

 私は仕事の持ち込みだったが、楽しみは温泉にはいること。近くの温泉はだいたい入っているので、初めてのところへ行こうと、下諏訪に行くことにした。奥さんが旦過(たんが)の湯がいいらしいというので、そこへ行くことにした。下諏訪や上諏訪には温泉の共同浴場がいくつかあるが、旦過の湯はその下諏訪の共同浴場の一つである。

 諏訪下社の秋宮から歩いて5分のところで、小さな温泉でいかにも下町の共同浴場という雰囲気である。さっそく浴場へ入ったが、地元の人が4人ほど入っていて、身体を洗っている。浴槽には誰も入っていない。3、4人入れば一杯になる浴槽が二つあるだけである。さて入ろうと足を入れたらこれが熱かった。たぶんもう一つの方は大丈夫だろうと思ったがこっちも熱い。ただ隣ほどではないので我慢してはいったが1分つかるのがやっとである。

 さて、仕方なく、短く出たりはいったり繰り返して何とか熱さに慣れていった。誰も浴槽にはいっていない理由が分かった。途中管理しているおばさんが入ってきて、熱い方の浴槽に温度計を入れ、48度あるなと言って戻って行った。私の入っているほうもそれに近いくらいあるはずだ。熱いはずだ。

 たぶん、私が初めて来た観光客だろうと察したのか、しばらく熱い湯と格闘して脱衣場に上がってきた私に、そのおばさんは「熱い湯だったでしょう」と語りかけ、私も「いやあなかなか、たいした湯ですね」と答えたものの本音はなんて熱い湯なんだとあきれていた。「熱い湯だと知っていらしたんですか」とおばさんがまた言い、私は「ええ、まあ」と答えたが、そうかこの湯は熱くて有名なんだとその時分かった。勝手に水で埋めなくてよかった。

 鎌倉時代から僧が熱い湯に入りに来た、と見出しに書かれている新聞の記事の切り抜きが脱衣所に貼ってあった。もう少し学習してから来るべきだった。奥さんの方は熱いことは熱いがそれ程ではないという。どうやら私は熱い湯に弱いということも分かった。が、これだけ熱い湯に入った後は爽快感がある。旦過の湯はすごいというのを人に聞いて行ったのだが、何がすごいのかまでは聞かなかったけれど、その意味がようやくわかったというわけだ。

 山小屋のある別荘地は今鹿が集団で動いている。何度も鹿の群れと遭遇する。今、駆除と称して鉄砲を持った狩猟の人達が近くの山を歩き回っている。雪で食料がないのと、狩猟から逃れるために安全地帯である別荘地に居るのである。

 奈良の鹿と違って、厳しい環境に生きている鹿達だ。この雪だらけの山中で木の皮をかじって生きているのだと思うが、これだけの多くの鹿を食べさせている自然というのもたいしたものだといつも思う。

        残雪の森に生きものらは帰る