続三浦しをんを読む2007/10/15 00:47

 三浦しをん『風が強く吹いている』を読了。分厚い本だ。500頁ある。それでも一日で読めた。ほぼ電車の中で読んだ。箱根駅伝が舞台のスポーツ小説といったところだが、設定がなかなか面白い。

 高校の陸上部をけんかで辞めた天才ランナーが、大学に入って掃きだめみたいなボロアパートに誘われて住み着く。そこに住む陸上の経験のないおかしな大学生たちとともに、箱根駅伝を目指すという話である。

 この長い小説を一気に読ませる三浦しをんのストーリーテラーとしての才能に感心した。ちょっといくら何でも無理なんじゃないのと思うような話を、そう感じさせずに最後まで持っていく力はたいしたものだ。もう三浦さんのお嬢さんなどとは失礼で言えない。三浦佑之氏の方が三浦しおんのお父さんと呼ばれるべきである。これは推薦図書に入れてもいいと思う。こういう長いのを学生には読ませたいのだ。

 今日はAO入試の面接である。今年の文科のAO入試はかなり盛況で、志願者は去年の倍はあるだろう。この調子で増えてくれるとありがたいのだが。AO入試は推薦枠とは違う扱いなのだが、実質は推薦のようなものである。全国の短大の傾向として推薦でなるべくたくさん取るという方向にある。私のところも例外ではない。そこで、問題になるのが、入学前教育である。

 どこ大学でもこの入学前教育に力を入れ始めている。一つは、推薦などで早く進路が決まってしまうと、あまり勉強しなくなると言われているので、その弊害を大学側が対策を立てるというものだ。もう一つは、リメディアル教育というもので、大学に入るための基礎教育を、大学の入学前に行うというものである。つまり、補習教育といってもいい。

 本来高校側でやるべきことだが、大学間の競争が激しいこの時代、大学側が行わないと、結局その代償は大学側が払わなくてならないのだ。これは大学の競争の激しいアメリカで導入されているもので、日本だけの問題ではない。個性化やゆとり教育は、学力の格差を生み出したが、これは教育を市場経済にゆだねた一つの帰結である。アメリカの抱えた問題が日本に起こったということである。

 個性重視やゆとり教育は、金持ちには恵まれた教育環境のもとで、余った時間に資金を投入してより高度な教育が受けられる。下層社会では、恵まれない教育環境で勉強への意欲を失い、余った時間を無駄に過ごすしかない。個性とは、恵まれた教育環境のもとで育まれると考えるべきだろう。この結果、大量の学力不足の学生が生まれるということになる。

 大学はこの学力不足の大量の学生を入学させなければ潰れてしまう。だから、入学前教育や補習教育が必要とされるようになったのである。アメリカは日本よりひどい格差社会であって、学力の格差もかなり激しい。日本の教育は確実にアメリカの後を追っている。それは、アメリカ型の市場経済を追っているからである。

 文科でも入学前教育を充実させようと企画をたてている。詳細はこれからだが、確かなことは教員の負担がまた増えるということだ。教員も楽ではない時代である。

         ただ熟しそして枯れゆく山葡萄