トラップ一家の物語2007/02/06 01:19

 午前中に川越の診療所に行って、通風の薬をもらう。血圧を測ったがやや高め。薬を飲むほどではないが、血圧だけ見れば充分にメタボリックシンドロームである。今日は出校せずに一日家で仕事。

 「アジア民族文化研究」の活動報告を書き、西郷信綱『古事記研究』の「ヤマトタケル論」を読了。それから万葉集を読む。それから、あいた時間に少しずつ百田弥栄子『中国の伝承曼荼羅』を読み進めている。この本は案外に面白い。案外といったら百田さんに失礼か。

 中国の神話や昔話、伝説では、「オンドリ雷神」を核としながら、様々な動物が神の側の存在として登場し、実に豊かなバリエーションを形作る。そのような展開を「曼荼羅」と形容しているのだが、アジアにおける、自然と動物と人間のかかわりがとても面白い。鶏、烏、蛇、鼠、蛙といずれも神もしくは神の使いとして、あるいはトリックスターとして活躍する。いずれも、農耕に密接に関わる動物たちである。

 NHKで映画「サウンドオブミュージック」のモデルになった、トラップ一家のドキュメンタリーをやっていて思わず見てしまった。オーストリア時代、トラップ一家は結構ヨーロッパのあちこちでコンサートを開いて人気をはくしていた。年上の子はすでに結婚していて子どももいた。そこが映画とは違っていた。ナチスに反対した父に召集令状が来て、それからトラップ一家合唱隊がヒトラーの前で歌うように命令されていた。アメリカからコンサートの誘いがあったのを口実にアメリカに渡り事実上亡命したということだ。国を出るときは汽車でいったので、映画のように歩いてアルプス越えをしたわけじゃない。

 昔、アメリカでのトラップ一家の成功物語とも言うべき映画を観た記憶がある。聖歌やヨーロッパの歌ばかり歌うので最初は人気がなかったが、アメリカのポップスのような歌を歌うようになり人気が出てきたという筋立てだ。実際にそうだったらしい。「トラップ一家物語」なるTVアニメもあるらしいがこれは知らない。

 バーモント州に自分たちで家を建て、コンサート活動をしながら貧しい生活をしていたが、ナチスに反対して亡命した一家としてマスコミに注目され、有名になっていった。コンサート活動は20年間続いたという。母親マリアが自伝を出版し、それをもとにあの映画が作られたということだ。 

 今は92歳になった次女が語り手で、アコーディオンを弾いて歌を歌う。元気なおばあさんである。何故この番組を見てしまったのだろう。映画を懐かしく思い出したということもあるが、あの映画がそうだったように、どんな時代でも、とてもポジティブな物語があるのだということにちょっと感動したのかも知れない。
 
 みんな明るくて、歌が好きで、努力家で、助け合って、歴史に翻弄されてもそれでも何とか頑張って成功してと、これはやはり一つの理想なのだと思う。それが「サウンドオブミュージック」が世界中で観られている理由だろう。それが映画という物語ではなくて、実際にそうだったと語る語り手のその明るさに、ちょっと感動したというところか。

      物語する寒明けの夜涙ぐむ