チビは偉い!2006/04/05 21:53

何?

中国の取材から帰って、撮影したビデオを見ようと、デジタルビデオカメラで再生したら、何と、映ってない。一瞬青くなった。そんな馬鹿な。しかし、なんどやっても映ってない。出てくる映像は2年前に取材した韓国の済州島の祭りである。嘘!、とよく調べると、何と、テープに録画防止のツメが解除になっていない。つまりこういうことだ。一度使ったデジタルテープをまた使おうとしたのだが、そのテープを以前にダビングしたときに録画防止のツメをオンにしておいて解除するのを忘れていたのだ。だから、録画されていなかったのだ。

ただ不幸中の幸いだったのは、二日目の祭りの火祭り儀礼だけは、新しいテープで撮影していたので、それは映っていた。一日目のしかも豚の供犠儀礼が映っていない。一時間半も撮影したのに。あの寒い中を苦労して撮っていたあの努力は何だったのか。泣くに泣けない。新しいテープを買ってもっていったのに、ケチったのがいけなかった。まあ、こういうミスはときどきやるから慣れてはいるが、このショックから立ち直るのに三日かかった。私の場合、いつも三日かかる。逆に言えばどんなショックでも三日で立ち直る。いいのか悪いのか。

チビは相変わらずだ。まだ、近寄ると後ずさりする。食事や留守にして帰ってきたときなどはよって来るが、おい散歩!と近づくと反射的に逃げる。どうも、身体に触れるような態度で近づくと反射的に逃げるようだ。たぶん、トラウマがあるのだろう。保健所から救い出された犬だから、大人に捕まえられてひどい目にあったという記憶がしみついているのかも知れない。あとずさりしなくなるまでどのくらいかかるものやら。

前のナナは散歩と言うと目を輝かしてとんできた。留守!と言うと、しゅんとしてテーブルの下に隠れた。それがおかしいものだから、時々留守!と言って遊んでいると、奥さんに叱られた。ナナは言葉が少しはわかった。だが、チビはほとんど分からない。人間とのコミュニケーションがあまりない犬なのだ。言葉のわかるナナもかわいかったが、言葉の分からないチビもまた別のかわいさがある。

ナナの顔は表情があり、人間に何かを訴えようとしているときはだいたい察することができた。ところがチビにはそういう表情がない。物足りないのだが、考えようでは、犬とはそういうものであろう。ある意味ではまっとうな動物なのだ。チビは犬の王道を生きているとも言える。かつて猟犬として生きていた祖先の遺伝子を潜ませながら、その遺伝子の適応できない世界を静かに受け入れているのかも知れない。それが自分の宿命だし、保健所で殺されるのも、私みたいな大甘な飼い主に飼われることもあまり差はないのかも知れない。そう勝手に推測すると、チビの顔も立派に見えてくる。

誰かに甘えたり、怒ったり、頼ったりしなければならない人間の方がやっかいなのだ。チビの偉いのは、吠えないところだ。時々何にむかってだか吠えることがあるが、それもたまにである。とても静かな犬なのだ。自分の世界を大事にしているように見える。親バカな言い方だが、そこはなかなかの犬なのである。といってもまだ三ヶ月しか飼っていないので、私たちがしつけたわけではないけれど。

いよいよ、新しい年度が始まり、ガイダンスが始まった。いろんな意味で私にとっては新しいことばかりである。どうなることやら、だが、まあなんとかなるだろう。