今年も古本市の読書を…2013/09/13 23:43

 風邪は何とか回復。それにしても一週間程度の旅行で風邪を引くとは体力がおちたなと痛感。少し太り気味で、運動しなきゃと思うが、膝痛でそれも出来ない。身体的には悪いスパイラルに入り込んでいる。

 仕事の方はまあまだ。二校の校正も終わったが、まだタイトルが決まらない。出版社は出版社で考えがあるので、もうお任せという感じである。もう一つの校正原稿が送られてきた。これは、柳田国男をめぐる座談会で、もうだいぶ前のものだが、ようやくまとまって今年中には刊行したいそうだ。この座談会、私がけっこうしゃべっている。こうやって活字になったのを読むと、われながら、よくまあこんなことを語ったなあと感心するが、よく読むと、思いつきのようなことばかりで、冷や汗ものである。これが本になるのは恥ずかしいが、しかたがない。思いつきとは言え、私の考えがそれはそれで吐露されているにはちがいないのだから。

 今週は、校正ばかりをやって過ごした。テレビはオリンピックのことばかりだ。あれって、福島の汚染水はコントロール出来ているって嘘ついて東京に決まったのではないの?後ろめたくはないのか、と思うのに、このはしゃぎぶりは何なのか。やたらに感動的スピーチばかり褒めたたえているが、褒められないスピーチをちゃんと報道しなくてはまずいんじゃないの、マスコミは。

 校正も終わり、次の原稿の資料集めに入る。柳田国男の教育論関係なのだが、わが大学の図書館にはほとんど揃ってない。さすがに、成城大学にはほとんど揃っているのだが、閲覧は出来るが借りることは出来ない。そこで大東文化大学には幾つかあることが判明。大東の知り合いの大学院生に借りてくれと頼んだ。うまく行けばいいが。

 実はこの夏エンターティンメント系の本を読んでいる。実は、学園祭で古本市バザーに出すた本のためである。去年と同じように、今本屋にある面白そうな本を私が読んで古本にして古本市に出す、という試みである。

 かなり読んだのだが、私の趣味として、外国のSFやミステリー、冒険小説が多くなる。ただ、外国物はあまり古本市では売れない。特にSFの売れ行きが悪い。SF好きとしてはそれが辛い。とりあえず読んだなかで日本の読み物を以下にあげる。

 藤井太洋『GENE MAPPER』。日本のSF。アマゾンの個人出版電子書籍で売れ行き第一位だったそうだ。そうか今は電子書籍で本を出す時代なのだと改めて実感。これはほとんどヴァーチャル化した未来世界の、遺伝子操作作物にまつわる話。けっこう難しい。アイデアはいいが、冒険活劇的要素がもっと欲しいところだ。★★★。
   
 風間一輝『男たちは北へ』だいぶ前の本(1995)だが新刊の如く積んであったので勝って読んだ。けっこう面白い。中年男が自転車で東京から青森に旅する話しだが、そこに、自衛隊の陰謀めいた物語がからんで、ロードムービー的展開にハードボイルドっぽい味付けがあつてなかなか読ませる。この小説が出てから東京から青森まで自転車で旅する奴が増えたという話しらしい。やや甘く★★★★。

 須藤爪於『脳男』。映画になるので題名は知っていたが、読んでみこると案外に面白い。感情のない知識だけの人間、という設定はよくある。それを正義のヒーローとして描いたのが新しいというところだ。脳男になったいきさつを、科学的知見をかなり使って解説しているところが読ませるが、やっぱり無理があるか、という感じはぬぐえない。だが、それを差し引いても、言わば特異な生まれの特殊能力を持つヒーローものとしては、新趣向で面白い。★★★☆。

桜木紫乃『氷平線』。直木賞作家の短編集である。エンターティンメントではない。昔風の小説と言っていい。なかなか読ませる。特に、職人の生を実に鮮やかに描いているところがあってこういう小説嫌いではない。「霧繭」という短編がよかった。北国を歌う演歌的な内容の人間模様になりそうな物語だが、さすがに文学的に読ませる。懐かしい感じがした。★★★☆。

森見登美彦『有頂天家族』。森見登美彦を卒業レポートに選んだ学生がいる。森見登美彦の小説を使って京都の文化論をやるということなのだ。それで、私も読まなくてはということで読んだ。読み物としてどうかと言われれば、その物語の緊張感のなさに正直読み通すことに苦労したが、そこはわきまえれば読み物として面白い。さて、京都の狸と天狗の物語、学生はどんな風に扱うやら。★★★。

 池井戸潤『オレたち花のバブル組』『オレたち花の入行組』『ロスジェネの逆襲』。テレビでおなじみの半沢直樹の原作である。テレビの原作は前二作で、『ロスジェネ』はその続編。たぶんテレビドラマ化されるだろうが。テレビもおもしろいが原作もおもしろい。実は、前二作は、テレビより前に読んでいた。だから、テレビドラマの筋は知っていたのだが、それでもあのドラマなかなか見応えがあった。配役や演出なかなかよく作ってあるからだろう。『ロスジェネ』は最近読んだが、半沢直樹の台詞が、堺雅人のかん高い声になってしまって、頭から離れない。テレビの影響力のすごさである。この本の面白さは、巷間いろいろ言われている通り。会社であるいは組織の中でストレスを感じているほとんどの人間は、半沢直樹のように最後にスカッと大逆転「倍返し」したいと誰もが思っている事だろう。私とて同じだ。特に、羨ましいのは、「倍返し」の大舞台である。一番緊張する会議の場面で、理路整然と相手を追求出来るあの冷静さと肝の据わり方である。これが一番、日本人に苦手なところだと思う。私も苦手だ。絶対にしどろもどろになる。ある意味で、この小説、サラリーマンのプレゼンテーションの理想を示したとも言える。★★★★。

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