風邪を引いても本は読む2012/07/06 23:03

 今週は最悪である。先週日曜日の長野からの帰りに引いた風邪が直らず、金曜日、ついに医者で薬をもらうまでになった。身体がだるく、咳が出る。熱はないようだが、夏風邪なので、熱はあってないようなものである。いずれにしろ暑いのだ。

 授業や会議は休めない。土曜日のシンポジウムの準備の資料作りも手を抜けない。木曜語の市民講座、次の日曜日の市民講座の資料作りもあって、よくもまあ、こんな忙しい時に風邪を引いたものだとあきれている。

 それでも読書が癖になっている。今週は、帚木蓬生の『日御子』、村上龍の『歌うクジラ』、田中慎也『共喰い』、有川浩『三匹のおっさん』を読んだ。『日御子』と『歌うクジラ』は大著。歌う…は上下巻である。ほとんど斜め読みである。『歌うクジラ』はグロテスクな描写が多く気持ち悪くてまともに読めない。よくまあこんなに人間の身体を切り刻むものだと、作者のその執着に逆に感心したほどだ。だから、早く読めた。気持ち悪いところは読み飛ばしていたからだ。『日御子』は、ほとんどあらすじ型小説。邪馬台国の卑弥呼登場前後の歴史小説で、これも斜め読みで十分な小説である。新幹線で読もうと長野駅前の平安堂で買った。 

 『共喰い』は評判通りだが、中上健次をふと思い出す小説である。さすがに斜め読みはしなかった、というより出来なかった。中上健次は、宿命が負性として奔出する暴力や性を描いたが、この小説は、そういうのではなく、女への暴力や性を抑圧出来ないことと、この世に生まれた以上生きなければならないこととが、直結してしまう、父子の話である。そこに世の中の負性や聖性という幻想があるわけではない。父子は、結局、その被害者である女たちのたくましい力によって成敗されてしまう。どう言っていいのか、喜劇すれすれの悲惨な人間という生き物の生活誌である。読み応えがある小説だった。

 それから岩崎夏海『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』も読んだ。一時間もかからないで読了。現実はこんなにうまくいかんぞ、という他愛のない感想。それにしても、定番のように女子高生が不治の病で死ぬのは何とかならんのか。『三匹のおっさん』は、私と同世代のおっさんが、悪い奴らをやっつけるという、団塊世代層をターゲットにした読み物。狙い所はいい。ただ、やっつける相手がみんな弱すぎる。かといって強すぎると荒唐無稽になるし、難しいところだ。