仕方がない2011/04/14 23:20

 少し温かくなったせいか計画停電もなくなり、ようやく落ち着いたというところか。桜も大分散り始めた。写真は花見でのチビ。明日は某大学の大学院の授業がある。頼まれてやむなく引き受けたのだが、これで、今年は私は研究日というのがなくなる。明後日は二週間遅れの入学式。いよいよ仕事が始まる、というところである。

 今日は就職進路課の人たちといろいろ学生の就職率を上げるにはどうしたらいいか話しをした。課題はたくさんあるが、まずは、基礎的な数学を勉強させて欲しいと言われた。企業ではSPIという基礎学力テストを行うが、まずあれでみんな落とされてしまう。特に数学的思考が問われる問題に弱い。文系だからしかたがないとしても、やはり就職できるか出来ないかの問題だから、仕方ないではすまない。最近、文系大学で基礎数学を教えるところが増えているが、私のところも考えねばならないようだ。

 それから、最後まで就職出来ない学生は、コミュニケーションが苦手で、友人もいない感じの学生が多いということである。自分をアピール出来る学生というのは、やはり、大学で充実した生活を送っている。サークルに入っていたり、友達といろんな活動をしていた学生は、そのことをアピールできる。それだけでも違うという。

 コミュニケーションの力やプレゼンの力を教えてはいるが、どうも、それ以前の問題のようである。個々の学生の性格の問題にまでかかわる。内向的で思索好きな学生は就職には向かない。あるいは、引きこもり系はもっと向かない。少なくとも今、企業が女性に求めているのは、積極性や明るさであって、特に営業系はそうである。そういうのは、大学で教えるものではない。生まれ育った環境のなかで自ずと身についているものである。ということは、その自ずと身についているついていないで、就職も左右される、という面がある。これが現実である。

 が、あきらめるわけにもいかない。学生たちが友達を作る機会やコミュニケーションの機会をどう設定していくのか、そのお膳立てをたくさん作ることも就職支援ということになる。まず、友達作ろうね、という幼稚園レベルからはじめなくてはならないというわけだ。教員も大変なのである。

 外国のメディアが東北の被災者の態度に賞賛を惜しまない、という報道が日本のマスコミでけっこう流されている。悲惨なニュースが多い中で何となく誇れる数少ない話題であるからだろう。その賞賛のニュアンスが、ほとんど「がまん」「忍耐」「仕方ない」「いたわり」といったことである。世界中でほぼ同じことに驚いている。こんな災害に遭って、なんでパニックを起こしたりしなのか、人に気遣いするし、信じられない、という論調である。

 阪神淡路大震災のときもこういう声は聞かれたが、今回は東北ということもあってか、かなり大きく報じられているようだ。確かに東北の人は、忍耐強いというイメージがあるが、これは日本人の文化の問題だということは、だれにでも了解できることだろう。「仕方がない」ということばがそのまま外国に紹介されているのが面白い。これは翻訳が難しいことばだろう。

 運命に抗わず受け入れる姿勢というように映るらしい。以前「さようなら」について書いたが、これは「左様であるならば」が元のことばで、その後に「仕方がない」が続くと考えられる。 つまり、死を受け入れる言い方である。日本人が争いを好まない、というのは、あれだけの戦争をやったのだから疑わしいところはあるが、少なくとも、死を受け入れるのに、争わない態度でいられる、という心の持ち方は、文化的態度であると言っていいくらいに身につけているのではないかと思う。

 「仕方がない」はあきらめとは違う。一種の見極めではないかと思う。ここは、抵抗しても無駄だからおとなしく耐えるしかない、機会を待てばいい、というくらいの、冷静なというのではなく穏やかな対処方法である、ということではないか。日本の文化が自然と戦わなかったわけではない。森林は伐採するし田畑も開墾してきた。ただ、時には自然にはかなわない、ということを身にしみて知っているということである。

 こんなの絶対認めない、や、妙に明るく元気に振る舞うのは、現実を受け入れない方法だが、「仕方がない」は現実をうまく受け入れて、それを鎮静化させて次への動作に移る、とても効率的な方法なのではないか、と思うのだ。不必要な抵抗はしないが、あきらめるわけでも、全面降伏でもない、曖昧のようだが、気がついたら立ち直っていた、というのが「仕方がない」のことばの持つ意味なのではないか。そう単純なことばではない。

                       仕方なきこと多くして落花かな

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