『七五調のアジア』紹介される2011/03/30 23:37

 今日は暖かく、桜も咲き始めたようだ。近所にビール坂というところがある。今は大きなマンションがたっているが、元はビール工場があったところで、その名残が坂の地名に残っている。その坂にはしだれ桜が何本か植えてあり、今満開である。この坂上からは富士山がよく見える。ちょうど夕日が富士の近くに沈むので、写真の撮影ポイントになっている。チビの散歩にもよくここを通る。

 今日の読売の夕刊に『七五調のアジア』の紹介が出ていた。短歌のコーナーは、福島泰樹である。俳句は島田牙城。共通の題で、それぞれ短歌と俳句を寄稿している。題は「叫ぶ」。実は、この題は震災前に決めたということである。が、今になってみれば、この題は痛いほど時宜を得たものになった。ちなみに福島泰樹の第一首は「わたなかを漂流しゆくたましいのかなしみふかく哭きわたるべし」である。

 『七五調のアジア』の紹介文の見出しは「七五調の源流は長江流域」とある。これは、やや踏み込んだ解釈。読売の側が考えた見出しである。文章の中で私が述べているのは「歌文化のかなりの部分は長江流域」といっているので、「七五調」とまではいっていない。が、新聞の見出しにはこういう踏み込みはよくあること。

 「七五調」の一源流に歌の掛け合いがある、ということは言える。歌の掛け合い文化のかなりの部分は長江流域の稲作文化と重なる、というところまでは確認出来る。これを縮めれば、見出しの文になるわけである。むろん、厳密に言えば、最初から「七五調」だったのかどうかはわからない。ただ、何らかの定型的な韻律があったであろうことは想定出来る。

 冒頭の文章に、洪水で流されて行く家に向かって歌を歌う男の話が紹介されている。短い文章ながらなかなかよくまとめてくれた。個々の論はなかなか難しいのだが、日本の短歌文化とアジアとのかかわりについて関心を持つ人には必読の本である。広く読まれることを願う。
むこうでは花の下にて鎮まるや