ガラス張りの洗面室2010/08/31 23:50

 それにしても毎日暑い。こんなことならもっと中国で過ごしておくべきだったが、学校の仕事もあるのでそういうわけにもいかない。奥さんは、山小屋へ行ってしまって、私一人家で仕事である。

 22日に雲南大学で国際シンポジウムの開会式と、初日の研究発表があった。私の出番は26日の開遠市での大会と聞いていたので、安心していたのだが、突然予定が変わって、これから発表してくたざいということになった。それはないだろう、と抗議するわけにもいかず、急遽発表することにした。多少の準備はしていたが、まだ日があるのでもう少し内容を詰めようと考えていたので、さすがにあわてた。が、仕方がない、原稿を通訳に渡し、「古事記における兄妹婚始祖神話と天婚始祖神話との比較」というテーマで話し始めた。

 私が話し、そのあと通訳が話す。発表時間は30分だが、通訳の時間を入れると正味15分である。かなり、省略しながら話したが、それでも5分オーバーしてしまった。でも、まあまあまとめられたとは思う、内容は、大和の高天原神話が兄妹始祖神話を選択し、出雲神話が天婚始祖神話を選択したのは何故かという問いに対して、それを少数民族の神話分析を通して答えていくというものである。

 古事記のそれぞれの神話についての分析はあるが、この二つを、共通した始祖神話のテクストとして並べ、どうしてこのような配置になっているのか、という問い方はたぶんなされていないので、そこが新しいアイデアということになる。発表時間が短いので、細かなことは言えなかったが、何とか、責任は果たしたというところだ。

 23日は開遠市に向かう。市に入るとパトカーが一行を先導してくれる。ホテルについたが、市の郊外にある新しいホテルだ。ツインの部屋だったが、われわれ外国人は一人一部屋である。入って驚いたのが、洗面室が総ガラス張りで、部屋から全部見えることである。シャワー室もガラス張りだから中まで見えるし、トイレも見える。カーテンはついているが半透明なのであまり役に立たない。

 実は私は、中国の地方の色んなホテルに泊まっているから、こういうのには驚かない。確かガラス張りは二度目だが、ここまで全部見えるというのは初めてである。われわれ日本人の中で何故ガラス張りなのかということで大いに盛り上がった。二人で泊まる時には困るだろう、と皆言うが、中国ではトイレは見られても平気なので、困らないのではとか、トイレからテレビが見られるのがいいのでは、とか、死角がないので防犯上良いとか、いろいろ意見が出たが、結局よくわからなかった。奥さんの話だと、ヨーロッパではよくあるそうで、ただ、中からブラインドで見えなくなるようになっているということだ。つまり、西洋式に作ってはみたが、細かな所には神経が行き届いていないということである。中国ではよくあることである。

 ちなみに、シャワー室だけでバスタブはない。ホテルの格が三つ星以下だとこんなものだ。ちなみに、中国のホテルの排水設備はだいたいが悪い。シャワー室は、ガラスで囲われているが、シャワーの水は、うまく排水されないので、洗面室の中にあふれ出る。いままで泊まったホテルはほとんどそうであった。熱水と冷水の表示が逆になっているなんてのもよくあることで、今度もそうであった。でも、さすがに新しいということもあって、居心地はよかった。ここに四泊した。

 ここは石炭の露天掘りで有名なところで、中国でも最大級の露天掘り鉱山がある。石炭による発電所もあって、また化学肥料の工場もある。工業都市ということで、町は豊かである。電力は豊富なせいか、夜になると町の大きな建物はライトアップされ、街路樹には豆電球のイルミネーションが点灯する。昆明より標高が700メート流は低い。だから、気温が高い。植物も亜熱帯系のものが目立つ。さすがに夜はクーラーが必要だった。

                        異国にて夏の終わりを過ごしけり