ノンアルコールビール2010/05/23 18:38

 この一週間はきつかった。月曜から土曜まで出校。授業がない金曜、土曜は、学会の大会案内の発送作業。土曜はそれに研究会。しかも、金曜日には歯を抜いた。根のところが化膿していたところで、いつまでも放置しておけないというので、決断した。

 金曜は歯を抜いて、まだ口内から出血している状態で、発送作業をし。5時からは別の学会の運営委員会。特集号のテーマについて討議。どういうわけか私がとりまとめ役になり、私がテーマを出すはめに。一番年配だということが一つの理由だが、この学会の運営委員をわたしは十年以上も前にやったのだが、今回は、もう私より年配の運営委員は誰もいない。寂しいというより、引き受けるんじゃなかったと後悔している。

 私が書いたテーマ案はかなり批判され、いささか腹が立ったが、まあしかたがないと我慢。批判の理由は、権力への言及がないとか、批判精神が欠如しているとか、テーマの政治性を巡るものだった。この学会時々こういう意見が飛び交うところで、私は、そんな安易な発想はしたくないと反論したが、とりあえず、そういう意見も考慮するということで矛を収めた。テーマ案の文章自体がよく練られていなかったのは確かで、いずれにしろ書き直すべきだとは私も思っていた。

 土曜は、午前中歯医者へ行き、午後は研究会。久しぶりに飲み会につきあい遅く帰る。むろん、私はアルコール抜き。というより、ここしばらくアルコールを飲んでいない。断ったわけではないが、歯の根が化膿していたので飲めなかっただけだ。抜いたのでしばらくしたら飲めると思うが、この習慣しばらくつづけようと思っている。もともとそんなに強いわけではなく、飲んでしまうと疲れが出て仕事が出来ない。ここんところ、アルコール0.00%(最近のノンアルコールはみなこの表示だ。0%じゃだめらしい)のキリンフリーばかり飲んでいて、酔わないから仕事が少しははかどった。それで、キリンフリーをしばらく飲むことにした。

 ノンアルコールのビールを飲み比べてみたが、やはりキリンフリーが一番それなりにおいしい。売れているのもよくわかる。ただ、アルコールやめて、仕事ばかりしていたら結果的に寿命を縮めるだけという気もするが。

 梅原猛『葬られた王朝』読了。実は、この本の書評を頼まれた。なんで私がと思ったが、頼んできたのは知り合いで、誰に書評してもらうか困っていたらしい。どういうわけか私に白羽の矢が立ったというわけだが、頼んだ彼も恐縮していた。つまり、書評しづらい本だということだ。学術系の本ではない。かといって、フィクションで書いているわけでなく、梅原猛はそれなりの確信を持って説いている。

 その説とは、大筋を言えば、出雲王朝が存在したこと。その王朝を大和王朝が滅ぼし、記紀は出雲王朝を滅ぼした大和王朝の鎮魂の書で、藤原不比等が中心に編纂した、ということである。鎮魂という視点は、いかにも梅原らしい読み方である。かつて梅原猛は「神々の流竄」で、出雲王朝は存在せず、出雲神話は大和王朝の話を仮託したものだと書いた。が、その後、出雲から銅鐸や矛などが大量に出土し、自分の考えが誤っていたことを反省し、出雲王朝は存在し、大和王朝に滅ぼされたオオクニヌシの顕彰のためにこの本を書いた、と述べている。御年85歳になる氏のそのエネルギーにはほんとに頭が下がる。

 言わば梅原猛の独特の歴史物語だと言ってもいいだろう。そのことを史実だとか史実でないと批判することは無粋というものである。読んでいて面白いことは面白かった。とにかく素直にその面白さを伝える書評であればいいのではないか。そう思うことにした。後は、文体の問題だけである。一応某新聞に掲載されるので、いい加減には書けない。気軽に引き受けたものの、なかなかこれは大変だぞ、というのが今の心境である。いつも引き受けてから後悔する。

                       たそがれの五月雨や烏鳴く