アバターを観る2010/05/17 00:28

 今週の土日は奈良で上代の学会の大会なのだが、今年は、学生を連れて歴博見学の日程を入れてしまったために、いかないこととなった。というわけで、土曜は一日家で仕事。「五七調のアジア」の論など読みながら、構想をねっていた。

 日曜は歴博。暑い日である。朝家を出てから帽子をもってこなかったことに気づいた。京成佐倉の駅から歴博まで歩いて行くので、帽子が必要だなあと思ったが引き返すのも面倒だ。学生との待ち合わせは日暮里なので、御徒町で電車を降り、上野のアメ横をぶらついて帽子を買うことにした。朝早かったが、さすがにアメ横、安く帽子が買えた。京成上野で電車に乗り、日暮里へ。毎年この時期に日暮里で集合して佐倉に行くのだが、京成の日暮里に降りたら、どうもホームが見慣れない。こんな駅ではなかったはずだか、とJRの乗り換え改札口まで行くと、いやはや、駅がかなり変わってしまっていて驚いた。

 去年工事をやっていたことは知っていたが、こんなになるとは。乗り換え改札口が二階だとすると、一階が上りのホームで、下りが三階のホームになっている。乗り換え改札口のJR側は、駅ナカ商店街になっている。こんなに変わっていることを学生に言ってなかったので、集合場所がわかるだろうかと不安になったが、何人かが手を振ってれたので安堵した。今年も、何とか歴博見学イベントは出来そうである。ただ、いつも終わった後で食事会をしているのだが、今年は、希望者が少なく断念。まあ仕方がない。夕方バイトという学生もいる。前期の終わりにでも打ち上げの食事会をしようということにした。

 歴博も1年ぶりだが、けっこうリニューアルされていた。今まで近代の展示室で終わっていたが、新しく現代の展示室が出来た。第二次世界大戦や戦後の世相などがけっこう詳しく展示してある。戦争の展示はイデオロギーが入りやすく国立としては難しかった思うが、なかなか客観的になるように工夫してあった。戦後に出来た団地の一室が再現されていたり、ゴジラの人形が展示されていたり、それなりに楽しめた。

 われわれが重点的に見るのは、異界をテーマにしている第四展示室で民俗の展示室である。ここも毎年見ているがそろそろ飽きてきたので、リニューアルして欲しいものである。特に都市の展示が大分古くなっている。都会の異界は時代とともに変化している。展示も変化させるべきだろう。ちなみに、アメ横で買った帽子はとても役に立った。12名のゼミで9名が参加。まあまあである。みんなけっこう夢中になって見ていたので、充実した一日になったろうと思う。

 さすがにくたくたになって帰ってきた。仕事をする気力無く借りてきたDVDを観る。「アバター」である。3Dで観るべきなのだろうが、映画館に行く暇もないので、どんなものなのかとりあえず借りてきたのである。

 すでに評されているようにテーマもストーリーも古典的だ。自然を破壊する文明人と先住民の抗争に、自らの非を悟った一部の文明人が先住民に荷担するというもの。おもしろさは、現実の先住民に、バーチャル世界のアバターを潜り込ませるという発想であろう。つまり、架空のバーチャルレベルでのこちらの現実と向こうという区分を無くして、本来ならバーチャル上のアバターなのに、そのアバターを現実の側に実体化したということだ。この設定どこかで観たことがあるなあと思ったが、よく考えたら「マトリックス」がそうだ。キアヌ・リーブス演じるマトリクスの主人公もまた、バーチャルの世界とこちら側とを行き来していた。ただ映画「アバター」は、現実の世界のアバターと、現実の操作者のあいだを行ったり来たりするというものだ。

 この設定斬新だとは思うが、アバターの操作者がこちら側の世界に戻ると、アバターがへなへなと崩れ落ちる。これじゃ、脱ぎ捨てられたぬいぐるみか燃料の切れたロボットみたいで、思わず笑ってしまった。もう少し何とかならんかったのか。

 まあそれでも、物語の「期待の地平」は裏切っていないし、ハリウッド映画らしく、死ぬ奴はやっぱりなと思うやつが死んで、死んじゃいけないのがちゃんと生き残る。うまく出来ている。3時間の長い映画だったが飽きることはなかった。

                           夏めく日軽き帽子を求めけり