東京モダンを見る2009/01/09 01:09

 6日から8日まで、NHKハイビジョンで外国のドキュメンタリー監督による、日本・日本人を特集したドキュメンタリー作品を3日連続で放映していた。東京モダンというタイトルでそれぞれ二時間番組だったが、これがけっこう面白くついみんな見てしまった。

 二日目の作品は、56歳のナオキというフリーターと29歳の女との同棲生活のドキュメントで、これが一番面白かった。ナオキは山形で、保険の集金のアルバイトをしている。収入は少なく同棲している女性が水商売をしながら何とか生計をたてている。ナオキは、元全共闘の過激派。バブル期は会社の社長で羽振りもよかった。バブル崩壊のあと落ちぶれて離婚もしている。今は、子どもほどの年の女性に助けられて何とか路上生活者にならないですんでいる。身寄りもなく孤独である。

 ナオキは英語が話せる。元左翼らしく弁も立つ。が、あまり真面目に働く男ではない。この俺が日本の貧乏の象徴だといいながら、女に頼って生きている。一方で捨てられたら俺は生きて行けないとも語る。女は精神安定剤や抗鬱剤をのみながら必死に働いている。ういう二人を見ているとやるせなくなるのだが、見ていて何となく笑ってしまうところがおかしい。

 監督の手腕なのだろうが、感じたのは、人は一人では生きていけないということ。どう見ても女はナオキと別れた方がいい。ナオキは女の父親と同じ年である。もっとましな男はいくらでもいるだろうにと思う。

 が、こういう男でも、たぶんましなところがあって、生活はしんどいが別れられないものなのであろう。それは女が一人で生きることの怖さを知り抜いているからで、ナオキもまたそうだ。そういう孤独の怖さを了解した関係は、相手のほんの少しでもましなところを探してそれを口実に一緒にいようとするものである。

 このドキュメントを見て、人と人とがつながる必然のようなものを確認した気がしてほっとさせられた。ナオキというどうしようもない男をちゃんと救う女がいる。それだけで世の中悪くはないものだと思う。

 今日の10時からフジテレビで山田太一脚本のドラマ「ありふれた奇跡」が始まり、これも見たが、ホームで電車に飛び込もうとしていた中年の男を、たまたまその場に居合わせた二人の若い男女が飛びかかって押さえ込む。それで二人の男女は知りあいになるという展開なのだが、後日、中年男は二人に礼を言い、あの時、私はホームから離れて立っていた、どうしてあなたがたは私が自殺すると見抜けたのか、ひょっとするとあなたがたは自殺しようとした経験があるのではないですか、と話す。

 そこで第一回は終わるのだが、今の時代、人と人とが関係づけられていく確かな方法が、自殺の衝動だというメッセージは、なかなかうまいと思う。

 人を救うのは金やモノではなく人でしかないという当たり前な事実が、さすがにこういう不況の時代にはクローズアップされる。悪くないことである。今日のクローズアップ現代では、過疎の地方を助ける支援隊という仕事を紹介していた。過疎の地域のお年寄りを助けたり地域を活性化させるために若者が雇われて支援する、というシステムである。金とモノをつぎ込んで地域振興をやってきた政治が残したものはさらなる過疎、つまり人と人との切断である。ようやく自治体も、金やモノでなく人の支援が必要だと自覚し始めた、と解説があった。これも当然なことだろう。

 派遣社員が仕事を失ったとたん住居もうしない路上生活者になるのは、彼等に返る地方がないからである。かつての期間工は出稼ぎだったし、親がいて実家に帰る事が出来た。失業して生活のあてがなくても、親類縁者だれかがそういうものの面倒をみた。昔は居候という言葉が当たり前のようにあった。

 派遣村の報道を見ていると居候という言葉も死語になり、彼等を受けいれる共同体がもう崩壊したことを知らされる。せめて、ナオキが救われたように、に腐れ縁でいいから、彼等を面倒見る切ない縁があればいいのだが、その縁すらも貴重なものになっているのが、今の社会の現実なのだろう。

 が、見方を変えれば、ようやくわたしたちはより深いところで人とつながる方法が見いだせるようになったとも言える。徹底して孤独になったとき、たぶん強固な縁が生まれる。そうでなければ人間は社会などというものを作ってはこなかった。とっくの昔に滅んでいたと思う。テレビをみながらそんなことを考えたが、おかげて仕事はかなり遅れてしまった。
  
    読み初めや人の孤独と向かいけり

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