反グローバリズムのグローバリズム2008/12/24 15:12

 ようやく授業も終わり休みに入ったのだが、いつものようにというか、体調を崩した。風邪なのだが、体がだるいだけでインフルエンザではない。要するに疲労が出てきたというところだ。仕事中は気が張っているからか何とか持つが、休みに入ると、この時とばかりに出てくる。要するに、もう働くなということだろう。

 気分的にはそんなに働いた気がしていないのだが、こういう限界を知ろうとしない私の脳みその構造自体が問題なのだということだ。身体はもう充分に衰えているのに、頭はそれを認めない。それに気付いたときにはすでに手遅れ…なんてことになる。

 土曜から体調を崩し、今日あたりは何とか回復の兆し。昨日は、北川辺のYのところへ恒例の餅つき。体がだるいのでどうしようか迷ったが、奥さんに運転してもらって行くことにした。Yは北川辺で塾を経営していて、年末に塾の生徒達と餅つきをする。Yの友人達がそれに参加して、一緒に餅つきをするというもの。

 久しぶりにUが参加していて、今年新築したYの家でいろいろと話をする。Uが真面目にグローバリズムはどうなるんだと聞いてくる。どうなるんだろう、と適当に思いつくことをしゃべったが、そのあといろいろ考えてみた。

 金融資本主義が崩壊した今、グローバリズムそのものへの反省があちこちで言われている。当然だろうと思うが、ただそれなら反グローバリズムに世界は動くのかというと、そうはならないだろう。反グローバリズムだと食料の自給率が5割を切っている日本はたちまち困ってしまう。

 経済が国境を越えるのは当然であり、人がまた国境を越えて移動するのも止めようがない流れである。そこには、経済活動や移動という名の自由があり、それを制限することは出来ない。つまり、グローバリズムはそういった自由を価値とする社会が必然的にもたらしたものであり、そのことを悪とは言えない。

 問題は、そういった自由が地域の中の狭い範囲である場合には、例え格差が生じても何とかその格差を是正するシステムが築けるのだが、グローバリズムは、その範囲が広すぎてそのような格差を放置するしかないということだ。

 むろん、格差を生まないような経済活動を保証するような制限をグローバリズム経済に設けるという手もあるだろう。が、現実問題として、格差を生まないほどの制限は難しい。それはグローバリズムそのものを否定することになる。反グローバリズムが今やかつての左翼運動にかわる反政府運動になっているのは、反グローバリズムが今の社会システムの否定、つまり革命になるからである。

 だが、反グローバリズムを今実践しているのは北朝鮮である。えっ、結局、北朝鮮なの?じゃ、反クローバリズムもあまり説得力を持たない。といって今のグローバリズムを認めたくないとすればどう考えればばいいのか。

 そこで問われるのが国家の役割だろう。今世界的な不況の中で国家は財政出動して懸命に失業対策や弱者救済に当たっているが、それが効果的な策かどうかは別として、これは本来の国家のあるべき姿である。グローバリズムの最大の欠点は、グローバリズムという規模では、それぞれの地域の弱者を救えないし救うという発想がないということである。弱者を救うのは、グローバリズムがその境界を楽々と越えてしまうところの、国家や地域共同体である。

 今回の不況でグローバリズムを先頭立っておしすすめた大企業は、格差是正や弱者救済などこれっぽっちも考えない存在であることを示した。それはある意味で当然なのである。彼等に、労働者をモノとして扱うなと言っても無駄なのである。もともと利益を追求する組織だからだというのではない。グローバリズムによって地域を越えてしまった企業は、もとも国家間格差や地域間格差の落差を利用することで利益を上げてきた(例えば人件費の落差)。その企業がその格差を是正する活動に積極的になるはずがない。

 とすれば、グローバリズムの課題は、グローバリズムが前提とするところの格差構造によって生じる弱者を救済するセーフティネットをどう作るか、ということであろう。反グローバリズムはそのセーフティネットを作る運動であるべきだろう。また、国家や地域共同体もそうあるべきだ。

 そう考えれば反グローバリズムのグローバリズムが必要である。つまり、セーフティネットのグローバリズムである。これだけの世界不況になると、セーフティネットも一国的な取組では限界がある。例えばブラジルからの労働者が職を失っている時に、当然ブラジル政府と日本との連携が必要だろう。

 グローバリズムが進んでくれば、国家や地域共同体の役割がより鮮明になる。現在の世界的不況はそのことを明らかにした。セーフティネットに特化した国家、セーフティネットの世界的な連帯、という道筋が見えたのではないか。それはそれでよいことであると思う。  

                          温石を無くしてひとり峠越ゆ

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