おすすめの本決まる2008/09/09 00:33

 ここんとこリハビリの日々であったが、何とか風邪で最低だった体調も回復してきた。神保町ブックフェスティバルでのセミナーでの「おすすめの本」も何とか五冊ほど選んで送った。結局、「罪と罰」「言語にとって美とは何か」「遠野物語」「ソロモンと指輪」「悲しき南回帰線」である。

 私自身が影響を受けたというのと、学生に読ませたいのと、とにかく面白いと思うのと取り混ぜたものになった。吉本の「言語にとって~」は何度も読んだ言語論で私の理屈っぽさはこの本の影響にもよる。「罪と罰」は青春の書。高校三年の時、ドストエフスキーを夢中で読んでいた。過剰な言葉や物語の力に圧倒され、なんだかわからないが文学の圧倒的な力に感動したことを覚えている。いまだに文学をやっているのはこの体験によるところが大きい。

 「遠野物語」はいまだにどう読んでいいかよくわからない書物だが、それだけ不思議な魅力がある。学生に読ませると民俗学的な読解になってしまうが、本当は、不合理そのもののの記述に満ちている書物として読んで欲しいのだが。

 「ソロモンの指輪」は動物好きな私の愛読書。ここに出てくる宝石魚のエピソードは昔予備校で教えていたときよく話題にしたものだ。あの頃が懐かしい。「悲しき南回帰線」も私の愛読書。レヴィ=ストロースの本はどれも難解だが、この本は読み物としてとにかく面白い。ナムビクワラ族へのまなざしがとてもいい。文化相対主義というものの意義と難しさとがよく描かれている。特に、文化というものの不合理さがきちんと指摘されている。構造主義とはまた別の意味で教えられるところが多い本である。

 中国雲南省のワ族について論を書いたときに、「悲しき南回帰線」の一説を引用したことがある。実は、今回の調査地の一つがワ族であった。ワ族地域は、ミャンマーの国境沿いなので、役所の許可がないと入れない。今回は中国の神話学者の李先生のお蔭で調査が出来た。

 それでも何度も検問を受けた。なにしろ麻薬で有名な地域でもある。警戒が厳しい。聞き書きで確認したところ、解放前は、生活の道具を購入するとき、アヘン何グラムで塩何グラムというように、アヘンを貨幣がわりにしていたらしい。

 ワ族の村に入ったとき、私たちのチャーターしたバスがぬかるみにはまりまったく動かなくなった。村人が助けに来たが車体が重いのでどうしても動かない。これはひょっとすると帰れないかも、とみな心配になったが、役所の方で人民解放軍を呼んでくれた。四駆のワゴン車であらわれた彼等はさっそく、ワイヤーで引っぱりバスを脱出させた。思わずみんなで拍手。このときばかりは人民解放軍が神様に見えた。ところが、彼等の働きは絶対にカメラに写すなと言われた。やはり軍隊なのである。  

 今日(8日)山小屋から帰る。良い天気である。そろそろ秋の気配深まる。明日は会議。

                  秋天や不安はあれど晴にけり

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