成城だより2008/05/28 00:53

 新しい部屋の整理はまだ出来ない。だんだんと部屋の狭さが現実的になってきて、結局収納しきれない本や雑貨が床に積まれたままになってしまった。授業で使う資料もまだ探せないでいるのもある。とてもじゃないが勉強どころではない。ほんとに原稿に追われていなくて助かった。

 駅まではゆっくり歩くと20分はかかる。運動のために少し遠回りをしながら、朝は駅まで歩くことにしている。住所は調布市なのだが、近い駅は成城学園前である。だから私の周りのマンションは住所は調布なのに名前に成城がついている。私の住むマンションも実はそうである。

 別に成城だから越したわけではない。調布あたりで、ペツトが飼えて、安いところはないかと検索していたら、たまたまひっかかったのが、このマンションで、最寄り駅は京王線の仙川だと思っていた。が、実際は成城学園前の方が近かったのである。

 ということで、今のところ成城の住宅街を毎日見学しながら勤め先へと通っている。それにしても、さすがに高級住宅街です。噂には聞いていたが、建売が並ぶ住宅街とは訳が違う。

 大岡昇平の『成城だより』は以前少しばかり読んでいたが、改めて読んでみると、歩いていく途中で目にする病院や桜並木や和菓子の店の名前などが出てきて、けっこう面白い。私が成城付近に越したからというわけではないが、武田百合子の『富士日記』と並んで、やはり『成城だより』は日記の傑作である。

 今日は、二つの大きな会議がある。午後の会議はお歴々の集まる重要な会議だが、ついうとうととして、自分のいびきに気付いて目が覚めた。隣は何事かと私を見つめている。たいしたいびきではなかったろうが冷や汗ものである。こういうことは初めてで、私も歳をとったなあと実感。

 休み勝ちで心配していた学生が退学したいと親を伴って来る。面談する。意欲はあるのだが、学校という場所に心や体が上手く適応しないようだ。本人は真面目で私も期待していた学生なのだが、仕方がない。人それぞれである。適応できないというのも一つの個性である。時間をかけて、自分の個性を無理に矯正しないで生きていく方法を見出すしかない。本人は泣きじゃくっていたが、自分がふがいないのであろう。

 帰りに奥さんとたまたま成城学園前の駅で一緒になる。バスで帰ることに。バス停で、S先生とそっくりな人がいた。まさかここで会うことはないだろうよく似た人だなあ、くらいに思って、でも本人だったらどうしよう挨拶しないとまずいな、でも向こうも私を見て何の反応もないしな、とどきまぎしていたが、結局声をかけられずに、そのままバスに乗り込んだ。そしたら、その人も私と同じバス停で降りた。ひょっとしてご近所か!

 どうも気になって、住所録を調べたら、やっぱりS先生であった。S先生の住所はちゃんと成城である。私の所とは格が違う。前々からとても上品な女性だと思ってはいたが、成城の方だったのですね。こんど学校であったら(めったに会うことはないのだが)、あのときは失礼しましたと挨拶しなくてはならないのだろうか。でも、向こうが気付いていなければ、変な人だと思われるし、気付いていたとしたら私に声をかけない理由があったかも知れないし、どうしようと、つまらない悩みをかええてしまった。

        夏めきて挨拶せずに別れけり

ギャル系営業2008/05/29 01:26

 今年は源氏物語千年紀だそうで、源氏物語研究者は、講演で引っ張りだこだそうな。私の勤め先のU先生も忙しいらしい。万葉集の成立は定かではないから、万葉集でこういうのはなさそうだ。家持が最後に歌を歌ったのは759年だから、来年は1250年目になるが、あんまりぱっとしない。

 奈良では2010年が平城遷都1300年ということで、いろいろと準備している。万葉集の研究に少しでも役立ってくれればいいが。

 読書室委員はの活動で、今年は学園祭でイベントをやろうと、企画を立てた。古本屋を開こうというのである。先生や学生から古本を集めて安く売る。売上金は世界の貧しい子供達のために寄付する、というものだ。古本屋の名前は「きみのくにや」というのになりそうだ。学生が中心になって動いてくれている。おもしろくなりそうである。

 推薦図書もそろそろ決めなくてはいけないのだがなかなか候補作が決まらない。「みんなで読書会」というのをやろうということになった。最近の話題本をみんなでわいわい言いながら語ろうというもので、最初の作品は東野圭吾の『手紙』に決まった。まだ読んでいない。読まなくては。

 奥さんの姪っ子が成城に越してくると言って、不動産やを回っている。なかなか活動的で面白い娘である。ギャル系である。およそ成城には似合わない。大手事務機の営業をやっていて、茶髪のギャル系営業として有名らしい。やたらに超がつく言葉をしゃべる。それでも営業成績は営業所でトップだそうな。

 昨日、六本木ヒルズに住むような青年実業家三人(取引先の社長らしい)と合コンしたということだ。相手が言うには、君みたいな金髪ギャルの女性は自分たちの周りにはいないのでとても新鮮だ、今度合コンしようよ、ということだったらしい。彼女は同じギャル系を連れていって、青山あたりの高級レストランで何万円もするシャンパンを何本も開けたということだ。

 今日、我が家に泊まりに来ている。要するに、我が家の近くに越してくれば、時々食事も食べさせてくれるし、寂しくもないから、ということらしい。あんまり来るんじゃないよ、と奥さんは釘を刺していた。ちなみに、彼女は大学の時はラグビー部のマネージャーをやっていて、山小屋に日本代表を連れてきたこともある。会社でもラグビー部のマネージャーをやっている。

 仕事はさすがにきついそうだ。営業だからノルマがきついということだ。我が家に来るのはそういう愚痴をこぼすためかも知れない。彼女が来ると成城の品位は少し下がるが、明るくなるのでまあいいか、というところだ。

  嬌声や新緑など目にも入らず