モーケン族2008/02/18 23:20

 昨日の夜9時からのNHKスペシャルは面白かった。ミャンマーの海の民、モーケン族の特集である。モーケン族については東洋文庫『黄色い葉の精霊』に出で来る少数民族である。モーケン族の起源神話はけっこう特異で論文にも使わせてもらっている。

 だからモーケン族については前から知っていたが、まさか映像で観られるとは思っていなかった。視力が9.0あるとか、潜りの名人とか、海の民の卓越した能力には感嘆させられたが、船の上で暮らす漂流民族であるのにミャンマー政府から陸への定住を要請されている現実に、少数民族の置かれている厳しさを実感しもした。

 海の民といっても、野生のイモや森での狩猟も行っているので、たぶん、文化としては、森の民の文化も持っている。船上で暮らし、時には森に入って水やタロイモや狩猟をするという文化である。

 が、現在では定住しつつあるという。例えば、海では近代的な潜水器具を使った漁や、底引き網漁船がやつてきて根こそぎ魚を獲ってしまう。中国へ輸出するということだ。だから、モーケン族の旧来の素潜り漁では太刀打ち出来ないし、資源は乱獲され、彼等の生活が成り立たなくなる、というわけだ。だから定住せざるを得なくなる。

 これは、インドネシアの森の民も同じで、森林伐採により、森での自給自足が 困難になり、政府の用意した定住村に移らざるを得なくなるのである。われわれ先進国の消費が、結局はこれらの事態を引き起こしているとも言える。そう考えると、何ともやりきれないが、この問題は単純な解決はないので、とりあえず出来ることから始めるとすれば、消えゆくモーケン族の文化を何らかの形で継承するか記憶にとどめるか記録する、ということだろう。

 同じ問題は私が調査している中国少数民族文化についても言えることである。

 今日は、午前は千客万来。家の塗装でペンキ屋の友人が来ているし、教え子の夫婦が、川越に雛人形を見に来たというので、幼子二人を連れて寄る。そこへ奥さんの友人が犬を連れて訪れ、いやはや我が家は大変な喧噪である。

 2歳の女の子は、チビが好きなのだが、家に入ったときちょっと吼えられたものだから恐くて側に寄れない。チビが近づくと泣き出す。ところがしばらく時間が経つと、次第ににチビに近づいていき、チビがおとなしいとわかると、撫で始め次第にエスカレートしてチビを羽交い締めするように抱き始めた。さすがにチビも逃げたがっているが、チビはこういう時に迷惑でも為されるがままになっている。不思議な性格の犬だ。かといって、喜んでしっぽを振るということがほとんどないのである。

 私は午後には雑務があるので、みんなを置いて学校にでかけた。夜は、E君と神保町の行きつけの中華料理の店で食事。店主が、7年寝かして置いた紹興酒の甕を開けた。壷の口は石膏で固めてあって、それをたたき割って中の紹興酒を飲むのである。何でも、花嫁に成るときにこのように紹興酒の甕を石膏で固め、7年経つと石膏を壊して飲む習慣があるそうである。飲んでみたがさすがにおいしかった。
   
         下萌になりたる頃や行き止まり