めでたい言葉2007/12/10 00:07

 何とか古代語彙の原稿を書き上げる。「さく・さかゆ」が私のテーマである。とてもおめでたい言葉なのだが、これで15枚書くのはちょっときつかった。ただ、古代の語彙というのはけっこう面白くて、例えば「サク」は「裂く」「割く」と「咲く」と同義なのである。春、花のつぼみが裂けてそこから花が咲く。だから「裂く」「割く」と「咲く」は意味が重なる。

 一方、「咲く」は「散る」はかなさを伴う。古事記の神話で、ホノニニギノミコトはコノハナサクヤビメに求婚するが、父は姉妹のイワナガビメと一緒に奥さんにして欲しいと頼む。が、イワナガビメは醜女であったので帰してしまう。そこで、父は、あなたの命は永遠ではなく、花が咲くように栄えるがはかないものとなると言う。このように、「咲く」は美しいが「はかない」のである。

 「盛り」と言う言葉もあるが、これもやはり「盛り」と「過ぎる」がセットになることが多い。目出度いことばというのは、言祝ぐことばであって、抒情的な詩の言葉としてはつまらない。そこで、抒情の言葉としてははかなさの方で用いられるようになったのかも知れない。

 「栄ゆ」は、記紀歌謡では常葉の葉がつややかに茂っているさまとして表現されている。つまり、こっちははかなくはない言葉であるが、それでも万葉では挽歌の時に用いられるのまである。栄えていたのにどうして…というわけである。

 とにかく何とか書き終えた。実は締め切り一ヶ月遅れの原稿であるが、催促がこないので、たぶん私以外にもまだ書いていない人がけっこういるのではないかと思う。これでようやく今年の原稿はあと一本になった。これを書けばゆっくり正月を迎えられるというわけだ。さっそく、次の原稿をと思ったが、さすがに、今日は疲れ果ててしまった。

    裂くるまでこのつぼみ抱え冬籠